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『NIGHT LAND』2号

『NIGHT LAND』vol.1 2号(2012・6月号)↓が刊行された。(創刊号→http://d.hatena.ne.jp/natsukikenji/20120316)
http://www.trident.ne.jp/j/NL/mag/2012Summer.html

創刊号に続き海外ホラー短篇の訳出紹介をメインにし、且つ底辺に常にクトゥルー神話を据えている路線は心強いかぎり。
今回も〈特集1・ネクロノミコン異聞〉〈特集2・モンスター・ゾーン〉と一応2種に大別して編まれてるが、ときにその区別が判然としなくなるほど〈クトゥルー〉というキーワードが色濃く通底してる。でその〈特集1〉のほうで今回も1篇訳に参加させてもらった、マイクル・ファンティナ「シムーンズの紅の書」。巻頭という光栄の他に挿絵が建石修志画伯というのも身に余ること。他の挿絵画家陣の名前を見ても、編集部の人脈の大きさにはいつもながら驚く。
ブライアン・ラムレイ「ヘスターの伯母さん」(田中一江訳)はタイタス・クロウ作者にしては意外なほど?オチの利いた佳篇。パトリック・ルトリジアーノ「アルハザードの末裔」(野村芳夫訳)は戦乱のイラクを舞台にした現代物クトゥルーで、個人的に趣味。グリン・バーラス「海が連れてきたもの」(安野玲訳)はそれこそ「人魚の海」(笛地静恵)を思わせる渚ホラー。ロン・シフレット「ピックマンの遺作」(金子浩訳)は私立探偵クトゥルーで、英米で盛んな事件簿系の好例。マット・レイション「ポートランド石のわが心」(増田まもる訳)はユニークな味わいの鉱物ホラー。ロバート・E・ハワード「失われた者たちの谷」(中村融訳)は前号に続くハワード発掘だが、こちらは現代舞台のアクション物で所謂〈モダン〉ホラーの先駆とも言えそう。
連載では朝松健『The Faceless City』「#2 アイルズベリ・クラブにて」が今回も短い中で雰囲気と迫力が光る。リレー・エッセイ〈私の偏愛する三つの怪奇幻想小説〉は井上雅彦貸本屋の恩人」でスタージョン作品他を紹介。立原透耶〈Asian Horror Now〉2回目は「中国の若手幻想小説家・哥舒意(ゴー・シューイ)」。朱鷺田祐介〈金色の蜂蜜酒を飲みながら〉は『ジョン・カーター』や『ニャル子さん』はじめ盛り沢山。鷲巣義明〈ファンタスティック・シネマ通信〉はカルト映画『ムカデ人間2』。他にマット・カーペンター〈クトゥルー・インフォメーション海外編〉。
エッセイでは友野詳「怪物の作り方――娯楽読み物屋の場合」がTRPGでの怪物創造法を興味深く且つユーモラスに語る。植草昌実「ロバート・ブロックの未公認?自叙伝」では『サイコ』を巡るエピソードが面白く、嘗て植草氏の計らいで同作を訳す栄に恵まれた記憶を蘇らせた。
次号は特集〈妖女〉&〈異次元〉で、今年9月発売予定。小生もまた1篇やらせてもらってます。








 書きそびれてたが、18日創元編集部訪問中に赤江瀑氏の訃報があった。F市さんは個人的にファンとのことでショックを受けていた。小生も密かに好きな作家で、凄絶な短篇作家のイメージが強い中『アニマルの謝肉祭』というあまり知られてない長篇に惹かれてる。ご冥福を祈ります。