.

クラーク・アシュトン・スミス

今更もいいところになってしまったが、C・A・スミスの三大シリーズ集成ようやく読了。
『ゾティーク幻妖怪異譚』『ヒュペルボレオス極北神怪譚』『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』(いずれも大瀧啓裕訳・創元推理文庫)。
いやーこの人の想像力にはほんとに参る。

ルリム・サイコルス、フズィウルクォイグムンズハー、キュクラノシュ… その独特なネーミング・センスも相俟って、スミスというと個人的にはなぜかまず孤高の幻想漫画家杉浦茂の破天荒極まる絵柄が頭に浮かんでしまうんだが、それは嘗て『ク・リトル・リトル神話集』(国書刊行会ドラキュラ叢書5)で読んだ「白蛆の襲来」や『真ク・リトル・リトル神話大系3』の「魔道師の挽歌」(今般の創元版ではともに『ヒュペルボレオス極北神怪譚』に収録。後者は「土星への扉」として)や「イルーニュの巨人」(創元推理文庫同題傑作集所収。今般は「イルゥルニュ城の巨像」として『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』に収録)の強烈なイメージに侵されてるせいだ。それでこの大集成ではそんな杉浦イメージを振り払えるかもと努めつつ読んだが… むしろあながちその連想は間違いじゃないと確認するような結果になった。ある意味ラヴクラフト以上に奔放な幻視を放ちながら惨虐と怪奇の彩りがまぶされる作品群は、しかしそこに流れる血の色はハワードのように真紅ではなくラヴクラフトのように赤黒くもなく、むしろ虹色あるいは瑪瑙色とでもいうべき天然性の明るさをどこかに孕んでいる。この冥さの抜けた絢爛ぶりはやはり… そうだ、魔術師エイボンはやはりイエローマンでいいんじゃないか!! …
…とまあそんなわけで? スミスの地に足のつかない自由さが一番発揮されてる気がするヒュペルボレオス物がとくに好き。といっても今はもうおなか一杯にさせていただきましたが…


ついでにということではないがこちらも同じ大瀧氏訳のロバート・W・チェイムバーズ『黄衣の王』(創元推理文庫)。でもこれもいつの間にか2010年刊だった…

ラヴクラフトにも影響を与えたと言われる魔の戯曲「黄衣の王」関連の作というのは、「黄の印」以外は活字になるの初めてじゃなかろうか。が、それにも増して同時収録の長篇「魂を屠る者」には驚いた、デニス・ホイートリ張りの大陰謀魔術戦小説! 解説によると他にもいろんなの書いてる人らしく、何やらそそられるものがある。でも思えば黄衣の王というのも…    それこそまさにイエローマンそのものじゃないか!? …


というわけで、大瀧さん・担当Fさん、ありがとうございました!
黄衣の王 (創元推理文庫) ゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫) ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫) アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚 (創元推理文庫)








レイ・ブラッドベリ氏死去。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120607/amr12060700140000-n1.htm
この人の名前を知ったのは、竹本健治氏作『匣の中の失楽』(幻影城刊)の作中に出てきたときだった。ブラッド=血、ベリー=苺、血の苺? などと、最初は小説中の架空の作家かと思ったが、違ってた。それで手にとったのが『10月はたそがれの国』。以後この両作家の世界はどこかで不可分なイメージが続いてる。
ご冥福を祈ります。