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『鉄人28号』原作完全板

鉄人28号 原作完全版 1  希望コミックス 鉄人28号 原作完全版 2  希望コミックス
日頃なぜかほとんど漫画を読まないが(といっても嫌いなわけじゃない)、これは全巻買って
読むことに決めた。子供のころ決定的な影響を受けた(と自分では思ってる)作だからだ。
鉄腕アトム』と並ぶ歴史的名作と言われながら(当時の『少年』にはこの二大名作が
同時連載されてたわけで、凄いことだ)、これまでなぜか完全版というのがなかったらしい。
が、そんなこと以前に、自分が〈決定的影響を受けた漫画だ〉と思いこんでいながら、
本当は当時からすでに散発的にあちらこちらを読み齧っていただけにすぎないらしいことが
わかってきた。勘違いしてたことも多々あるとわかってきたが、虫食い的に読んでただけ
なのなら当然のことだよな(記憶が虫食い状態ってこともあるだろうが)。当時は自分が親に
買ってもらった号で読んだり、友だちの家で読んだり、学校に誰かが持ってきたやつを
読んだりで、今思うとずいぶんまとまりのない読書事情だったようだ(それはそれである意味
幸福な状況だった気もするが)。
で、勘違いというのは、たとえば鉄人28号のほぼ最初の強敵となる三本足のロボットが
鉄人27号だと思っていたのだが、それは全然違ってて、三本足のやつは単に「怪ロボット」
だった(本版第2巻)。実は当時鉄人を初めて読んだのはそのあたりからで、それ以前のことは
朧な霧の彼方のことだ(というか、単に知らなかった)。では27号以前の鉄人というのは
どうなったのか。それももちろん、これを読んで初めて知った(いや、アニメも欠かさず見てた
ので、その辺の事情は見ていても意識に刷り込まれなかったってことか)。1号から26号は
敷島博士らが日本軍の指令によって試作しつづけたロボットたちだが、どれも失敗に帰していた。
それらは全部似た形で、前述の「怪ロボット」にちょっと似た形をしている。
で、次の27号は苦心の末にかなり高性能に完成するが、これはそれまでと全然違う二枚目
フェイスで、かなりカッコいい。しかし博士がそれでも満足せずに造ったのが、二枚目という
のとは違うあの優れて個性的な顔をした、我々のよく知る28号だったというわけだ。ちなみに
27号は生き残ってて、28号と闘うはめになる(第1巻)。
チンピラギャングの村雨健次に兄がいたというのもこのたび初めて知った(これもアニメや実写
ドラマで見てる可能性もあるが)。村雨竜作だ。このふたりは鳥羽一郎山川豊並みに男気のある
友情で結ばれた兄弟で、悪漢なのに妙に正義感や義侠心が強くて、しばしば正太郎や警察の味方
さえしてしまう。しかも兄竜作はそうした正義への加担の渦中で、自ら命を捨て憤死する。
弟の健次もその遺志を継ぎ、ことあるごとに正太郎と助け合う。それでいてちんけなギャング
稼業も続けているというのが可笑しい。(ちなみに筆者の筆名はこの村雨健次のファースト
ネームから頂いた?)
恐竜ロボットを操る悪党ニコポンスキーに瓜二つの人物クロロホルムがいることも初めて知った。
この恐竜ロボットのエピソードだけなぜか単行本で持ってて、その表紙裏の登場人物の顔の
列挙にニコポンスキーだけ顔が二つ並んでいたのを子供心になんとなく不審に思ってたが、
そういうわけだったのか。ちなみにこのころ(第4巻)はニコポンスキーにスリル・サスペンスに
シャネル・ファイブにと悪役が入り乱れて複雑怪奇に盛りあがる。当時スリルとサスペンスという
言葉をこれで初めて知った。シャネル・ファイブがこのたびの版ではジャネル・ファイブと
なっているのは、たぶんブランド名そのままだとまずいからなのだろう。
現在第5巻まで刊行済みで、6巻近日発売とのこと。今のところ4巻まで読んだ。
全24巻で1冊870円… まあ、月1冊らしいからその都度買っていけば、なんとなく負担感から
免れるんじゃないか?と思いたい。