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2−2?

ドイツ代表とのW杯直前強化試合のことだ、もちろん。
予約録画しながらも〈ナマ〉で見た。が、ハーフタイムに他局の早朝ニュースへ
回すと、なんとすでに結果が! つまりテレ朝の中継は純然たるナマじゃなかった
のだ。おいおい冗談ちゃうで。ミステリで言えば、図書館で借りた本の途中に
赤ペンでネタバレが書きこんであったようなものだ。まあオレはべつにいいよ、
ネタバレ見てもそんなに幻滅しないでもすむタチだから。
それでもちょっと拍子抜けはした。きっと悪評だったんじゃないかね、ネットでの
評判とかとくに見てないけど。まだW杯本番じゃないからまあいいようなものの…
さて肝心の試合だが、結論から言おう。これは出来レースだ。
つまりあの審判のせいで日本は勝てなかった。フェアだったら、少なくとも3−2
では勝ってた。もっと本当にフェアだったら3−0、いや4−0だった。
試合は、ナマで見たあとに録画したのをもう一度見た。そして怪しい部分はスローで
何度も見た。怪しい部分は本当に怪しかった。最大の疑惑は、後半ロスタイム、
つまり終了直前のドイツPA内でMF福西がMFオドンコルに足をかけられて
倒された件だ。これはあまりにも明らかなファールで、つまりPK確実なやつ
だった。実況はライン付近とか言ってたが、明らかに内側だった。それを審判は
ファールもとらず流した。なぜ流したか。一応言い訳が立つとすれば、福西が倒れて
失ったボールが直後にMF三都主に渡り、すぐにゴールへ迫れるチャンスを日本が
継続して得られたから、という考え方ができるってことだろう。まあたしかに、
だからこそ福西自身も何事もなかったようにすぐ立ってプレーしつづけたんだろう。
だが結果的にチャンスは活かせなかった。あとでジーコは激怒したらしいが(この件
だけでなく全般に主審がドイツ寄りだったことに)、これがもし親善試合で
なかったら激怒程度ですむ話じゃなくなるはずだ。前回大会で韓国に有利に導いた
審判がその後世界からどれほど非難を浴びた? つまりあそこはなんとしてでも
試合を止めるべきだった。誰よりも福西自身がアピールすべきだ。三都主もいくら
自分にチャンスが来たからって、PKを捨てることはないだろ。そもそも
前半にMF加地が倒されて担ぎ出されたのも忘れたみたいに、並ばれてロスタイムに
入って絶対1点とらなきゃならない場面で、倒されてすぐケロッと立つなんて、
素人のオレにもわからんね。福西はフィジカルが強いらしいからそれを見せたいのか
知らないが。だいたいそこらが日本選手のいまだに素直すぎるところだよね。
それに引き換え、ドイツは悪辣極まりなかった。まずこの試合、黄紙は日本に1枚
ドイツに5枚出たが、後者はあと4〜5枚出てもおかしくなかった。とくにMF
シュバインシュタイガーは加地を捻挫させたとき出ず、後半に1枚出たが、加地の
ときもし出てたら二度目は退場だった。しかもそいつがドイツの2点目を決めた。
つまり加地が怪我させられたときちゃんとイエローが出ていれば、日本は
追いつかれることもなかったってことになる(この件ではジーコ自身インタビューで
皮肉ったらしい)。だが悪辣ってのはむしろそのことじゃない。
日本は後半30分前後という絶妙な時間帯に立て続けにFK絡みで2失点したわけだ
が、妙だと思わないか、思わぬ展開から2点リードされた直後に、左右それぞれの
ほとんど同じPA近くからFKをとれるなんてさ? そこでそれぞれのファールを
見てみると、ひとつめは中盤へあがってのバックパスをカットされたFW高原が
必死に奪い返しにいってスライディングしたときだ。たしかに高原は足にいってる
ようにも見えるが、相手選手の倒れ方はどうも巧すぎた。このときの高原もまったく
アピールしていない(誰よりも現地で揉まれてるはずなのに)。2つ目のファールは
DF宮本が右サイドで競ったときに背中が接触したということらしいが、録画で見る
かぎりいつどの時点のかもはっきりしないほど目立たない局面だった。遠目にも
わかるほど加地の足首をひん曲げたプレーにイエローが出ず、背中がちょっと
触れあった程度でPA付近の絶好の位置での同点FKが発生する。どう見ても
出来すぎだろ。しかしFKが決まるとは限らない、と言うだろう。それはそうだ。
だから事後策もあるわけだ。並んで調子こいたドイツは逆転を狙って、その後まず
オドンコルがPA内で倒れた。だがさすがに素人目にもわかるこれは
シミュレーションととられて黄紙が出た。次はFWクローゼも自分で転んだ。
こちらは紙こそ出なかったが、PKにはならなかった。当然両人とも大げさに
ファールをアピールした。つまりだ、もしあのFK2本で並べないようだったら、
その後のPK2本でやればいいってことだったわけだ。しかし幸い日本の対応も
まずくてFKで巧くとれたから、そのあとPKで逆転勝ちまでさせたらさすがに
目立ちすぎるだろうってことで、クローゼ&オドンコルの二人の試みは反故に
されたわけだ。つまり、直後に始まるW杯のホスト国であるドイツの、〈勝ち〉か
悪くても〈分け〉というのがあらかじめ主審(ギリシア人らしい、なんでんかんでん
の社長みたいな妙に濃い顔したイヤラシ系のおっさんだったが)の頭の中では
できてたってことだ。そのぐらいは朝飯前だろう、プロレスのレフェリーが
カウントのとり方やレスラーとの阿吽の呼吸で勝敗を決められるように、ベテラン
ギリシア人審判がドイツ人チームと呼吸を合わせて試合を好きな方向へ持ってく
ぐらい、打ち合わせなんかしなくたってできて当たり前だ。ただ誤算はあった
だろう。前半は八割方ドイツが押してたのにシュートが軒並みタコで0点に終わり、
後半になると25分ぐらいまで日本が一方的になって、たちまち2点とられちまった
んだから。それで窮余の策をとるしかなくなったってわけだ。一方の日本は福西の
ほかに、高原と代わったFW大黒もMF中田のラストパスにゴール前に跳びこんだ
が、相手にど突かれて転び、得点できなかった。明らかにPKだが、またも
流された。大黒もこれまた何のアピールもしないから、何事もなかったみたいな
雰囲気で終わっちまったが。つまりフェアなら日本はPKで2点追加した上に、
相手に与えたFK2つもほんとはファールにならなくてもすんだ程度のものだから、
本来なら4−0になるはずだったというわけだ。あと、日本の一枚だけのイエローと
いうのはFW柳沢がCKの際に相手DFと競ってユニを掴まれ破られたときの
ものだ。これも合点がいかない。ユニ破られて着替えまでしたのはこっちなんだ
からね(ただ日本の新ユニはとくに破れやすいらしいが)。もっとも、さすがに
まずいと思ったのか、競った相手にも両成敗で1枚ってことになったらしいが…
…といった事情だが、もちろん親善試合でそこまで言うことなかろうと言われる
だろう。しかしそれが現実であることもたしかだよね。そしてW杯本番も、
当然同じ現実の延長上で繰り広げられる事態なわけで…