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ミルトン・バナナ

natsukikenji2007-01-13

Sambas De Bossa
ミルトン・バナナ。この一度目にしたら忘れがたい名前の人、しかし一般的にはあまりというかほとんど知られていないんじゃないかと思う。そういうおれもン十年前、何も知らないまま、ただサンバってものがめちゃくちゃ聴きたいという訳の判らない衝動で、レコード屋(今は潰れた両替屋って店)で訳も判らないまま適当に買った一つのカセットテープ。それがミルトン・バナナ・トリオ『コパカバーナの誘惑』だった。判ったのはリーダーのバナナって人がドラマーらしいってことだけだったが、これに一聴で打ちのめされた。それは偶然にしてはあまりにできすぎてる、神との出会いだった。
ボサノバ、というにはちょっとだけ熱っぽすぎるリズム(それがサンバってものなんだろうなと勝手に思ってた)と、何よりもめちゃくちゃ甘ったるくて胸を掻き毟られるようなメロディー(楽器はピアノとベースとドラムだけ)、そして最高に肝心なのは、そこに女性コーラスが混ざることだ。これが何とも……! あとで思ったことだが、おれの場合、どうしようもなく惹かれたのはどうもこのコーラスでこそあって、楽器のほうは二の次だな、と。大体楽器の演奏がいいか悪いかなんて全然判らんし。だからほんとはコーラスはあくまで薬味でしかないんだろうが、何だか逆に思えた。つまり楽器はコーラスの伴奏してるだけじゃないか、と! 
だがその後まもなくそのテープを紛失してしまい、以後ン十年忙しさに紛れて買い直すなんてこともないままにきた。ただときどきあのコーラスへの渇を癒したくなると、後年知ったアマゾンズを聴いてたりした(これがまたイイわけだが、その話は別にする)。それが数ヵ月前になぜか記憶が再燃し、『コパカバーナの誘惑』の名をネットオークションで見つけて、無我夢中で落とした。ところが何と……それはCDじゃなくLPレコードだった!orz レコード・プレーヤーを持ってない身には如何ともしがたく、押入行きとなった。ちなみに右の絵がそのアルバムのジャケット。このいかにもな絵も邦題も日本独自のものに違いなく、原題はSamba E Esso(サンバ・エ・イッソ)というらしい。これはもう海外でもCDでは手に入りにくいものになってた。そういう訳で、くそーっとばかりに焦って次に買ったのが、ずばり『ミルトン・バナナ・トリオ』というアルバムCDだが、これは「イパネマの娘」「サマー・サンバ」「ジェット機のサンバ」等ほぼボサノバの定番集にすぎなかった。実はこのバナナという人は本名アントニオ・ソウザといい、『ゲッツ/ジルベルト』にも参加してるその道の大物とのことで、自分のバンドでもその路線を出すのは当然なんだろうが、あのコーラスが耳について離れない身としては、ただのボサノバじゃどうしても物足りない。それで、『コパ…』の続編とおぼしきSambas De Bossa(サンバ・デ・ボッサ)なるものがあることを知り、即買ったのが右のCDだ。インポート盤で(メイドインブラジルなんて初めて買った)、ポルトガル語タイトルの中で判るのは14曲中唯一「マシュ・ケ・ナダ」だけで、あとはなんだか訳判らんというのも『コパ…』を思わせるし、実際聴いてみると、たしかにジーンとくる何かが共通してると感じとれた。が、肝心の女性コーラスはここにもなかった!orz ……しかしまあ、長年の渇をほんのちょっとだけ癒せたような気はする。あとは本家『コパカバーナの誘惑』の復刻を待とう。バナナ=ソウザ1999年没、64歳。