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尾藤イサオ

さらに色々あってますます凹みきってるんだが、それはさておき。



日テレ「ザッツ宴会テイメント」に山下敬二郎ミッキー・カーチス・平尾昌晃のいわゆる〈ロカビリー3人男〉が出ていて、その3人がステージで揃うってのはまずなかったことだと小野ヤスシもいってたから凄いことなんだろうが、残念ながらおいらの世代は微妙な差でその3人の最盛期をよくは知らない。というのは小学生の後半期頃はもうロカビリー衰退期になってて、テレビのショー番組でその名残りを何とか追いかけられる程度で、しかもその3人は大物過ぎるせいかそういうテレビにはほとんど出てなかったからだ。それでも小学生のくせに当時沢山あったショー番組がめちゃくちゃ好きで、とくに土曜7時の『7時にあいまショー』とジェリー藤尾MCの『ハッピー・バースデー・ショー』は欠かさず見てたが、そういうのに時々出ては独特すぎるパフォーマンスで子供心を掴んだのが、やはり今夜の「ザッツ…」に出てた尾藤イサオ(ごく初期のテレビ出演名はイサヲとなってたと思うが)だった。
当時のショー番組でのポップス歌手は大体みんな漣健児訳の日本語のついた明るいカバー曲を唄うんだが、彼のコーナーだけはなぜか照明が薄暗くて、しかも黒い革ジャンに細身の黒ズボンて格好で、おまけにとんでもなく艶かしい振り付きで(イナバウアー並みに海老反ったり床に横たわって悶えたり)英語詞のままの何やら妖しい雰囲気の歌を激しく熱唱するものだから、子供の目と耳にとっては大人のいけない危険な世界を垣間見せられたような気がして、しかもそれが痺れるくらいにカッコよく見えて密かな楽しみになってた。「密かな」というのは、「あの歌手がいい」なんてもし人にいったら「えー?」とか引かれそうな気がしてたからだ。
のちになってみればあの激しい振りや唄い方はプレスリーの影響だったのだと納得できるが(デビュー前の渡米時にもろ感化されたらしい)、当時の田舎の小学生はプレスリーなんて知らないから、ただとにかく凄い芸だと驚愕しつつ見てた。テレビ見ていて刺激と興奮で体が震える感じを覚えたのはプロレスと尾藤イサオくらいだ(プロレスではほんとに足が自然とガクガクするを止められなかった、今思い返すと可笑しいが)。
しかしその尾藤も「悲しき願い」がヒットしさらには『あしたのジョー』の主題歌で一躍メジャーになり、やがて予想もしてなかったとんでもなく飄軽なキャラを表に出し始めて、役者としても八面六臂の活躍をするようになると(今クールは月9に出てたらしい!)、いつしかすっかり関心が薄れていってしまった。子供の頃ショー番組で「マック・ザ・ナイフ」や「のっぽのサリー」唄ってたときの矢鱈危険で妖艶なイメージを裏切られたような気がしたからだろう。でも今になってみれば、あの陽気なキャラあってこそのほんとに素晴らしいエンタテイナーなんだなと思える。それにしてもいつまでも若いわー、3人男はみんなそろそろガタがきかけてるのに、この人だけは何十年経っても全然変わらないもの。