.

『ペルディード・ストリート・ステーション』チャイナ・ミエヴィル

翻訳家・日暮雅通氏よりチャイナ・ミエヴィル作『ペルディード・ストリート・ステーション』を頂戴しました。
ペルディード・ストリート・ステーション (プラチナ・ファンタジイ)

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/116418.html
ハードカバー2段組約660ページの大冊。Cプリースト『双生児』等の話題作を出している〈プラチナ・ファンタジイ〉シリーズ最新刊(6/25刊)。但し原書は2000年刊で、本国イギリスおよびアメリカでは既にこの作家の代表作となっている《バス=ラグ》シリーズの第1作にあたる。「訳者あとがき」によればバス=ラグとは異世界の巨大都市国家の総称で、本作はその1つニュー・クロブゾンを舞台として繰り広げられるスチームパンク・タッチの幻想エンタテインメントといえそうなようだが、実際にはそんなふうに大まかにまとめてしまうのを躊躇うほどのあまりに沢山の要素がこれでもかと盛り込まれた大変な小説になっているらしい。精神を食い尽くす巨大な蛾の怪物とか、次元を行き来する大蜘蛛とか、字面を見ただけでワクワクするようなものも登場するそうで、しかも作者は自分の創る世界を「英国式怪奇幻想小説の新しい波=ニュー・ウィアード」だと宣言しているという。これはホラーファンとしても大いに関心をそそられずにはいない。というか既にデビュー作『キング・ラット』というのが邦訳されててこれがロンドンを舞台にしたゴシック・ホラーとのことで、それすら見過ごしてたのは全く不勉強にして迂闊orz
退廃巨大都市を舞台にした大作幻想ホラーというと本邦の朝松健作『夜の果ての街』が思い浮かぶが、本場(?)イギリスのこちらは果たしてどんな世界観を生み出しているんだろうか。帯にあるように本書はA・C・クラーク賞&英国幻想文学賞受賞作だが、同じ《バス=ラグ》シリーズの後続2作も既にローカス賞とかクラーク賞などを続々受賞してる。作者は小説だけでなくコミックを描いたり政治的思想的な発言をしたりそちらの著作もあったりと、とにかく相当の才人のようだ。
因みに本書巻頭にはフィリップ・K・ディック『あなたをつくります』の1節が引用されていて、訳者の日暮氏は拙訳を用いてくれた。光栄です、日暮さんありがとうございました!





(※お贈りいただいた本、今回よりその都度紹介させていただくべく努めます)