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美空ひばり

前に安く仕入れておいた美空ひばりの映画DVD-BOX.Vol.2(全8巻のうち)の収録4作をようやく全部観賞。『お嬢さん社長』『陽氣な渡り鳥』『ひばりの陽氣な天使』『青春ロマンスシート 青草に坐す』。
(←上左から『社長』『天使』『渡り鳥』、下『青草』)
『渡り鳥』(52年共演淡島千景)では不憫な貰われっ子のひばりが剣劇一座に入り歌と踊りで街のスターに。『社長』(53佐田啓二・監督川島雄三)では浅草の歌劇に憧れる令嬢が父の命令で若社長に。『天使』(53十朱久雄)では牧師の娘ながら歌が好きで教会を舞台代わりに…という3作はいずれも境遇に逆らって夢を目指す天才少女という設定の「如何にも美空ひばり」な作品で、澄み切った歌声と鍛えられた踊りをたっぷり堪能できる。『青草』(54)だけがやや変わっていて、監督野村芳太郎共演笠智衆三宅邦子で時間も長く比較的本格派の映画。屈託ない女子高生の一見平和な家庭にもやがて危機が…という青春&ホームドラマ。唄うシーンはセーブされむしろ後半での父(笠)の不倫を知って苦しむ娘の演技がクローズアップされる。ひばり15〜17歳当時の作品群で歌が天才的なのは当然だが総じて演技面でも堂に入っていて常に安心して見ていられる。「リンゴ追分」を大ヒットさせ国民的アイドルの座に駆けあがった頃で、テレビ普及前夜の時代の娯楽の王だった映画界でも寵姫となっていたことが窺われる映像群だ(そのごく一端ではあるが)。いつか故中島梓が「小沢昭一は早稲田出ていながら美空ひばりが好きだなんていってるが嘘に決まってる」といってひばりといえどもインテリ層まで巻き込むほどのスターではなかったと見なしていたが、団塊以後の世代の甘すぎる見方だとあらためて思う。
美空ひばり DVD-BOX 2