PUFFYは搾取されていた!?
ちょっと前のことになってしまったがどうしても触れておきたい件。12/5土『追跡! A to Z』「アキバアイドルを輸出せよ」。http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/list/091205.html
要するに秋元康がAKB48を海外展開しようとしてるってことだが、ただのコンテンツとして売るんじゃなくてその「フォーマット」を売ろうとしてるってところが物凄く画期的だってこと。つまり「アイドルグループAKB」という「枠組み」を権利物件として欧米やアジア諸国に売り出してそれぞれのローカルな「AKB」を創らせ世界中AKBだらけ?!にしようってことらしい。こういうコンテンツのフォーマット売買に関しては日本はいまだ後進国みたいだけど(そのせいでとくにアジアでいろんなものがパクられてる)それでもテレビ番組では例えば『料理の鉄人』をアメリカに売って人気得たり逆に『クイズ・ミリオネア』をイギリスから買って一時的にもせよヒットさせたなんてことがあった。でもこと「アイドル」というものに関するかぎりはこのAKB48が業界初。いうまでもなくOTAKU文化とかクールジャパンとかいうものが世界的ブームになってるという波に乗っかってのことではあるが、とにかくそういう日本ローカルな芸能の「形式」そのものを商業的権利の伴うものとして認めさせようという発想とその実践にはちょっと目から鱗なものがある──とはいえそれでさえこういう番組で見せられると世界的には遅きに失してる感を否めないと思えてくるわけだが…
で実際に秋元が世界市場でプレゼンしての感触はというと、そうした波に乗っての好感触がある一方でやはりまだ相当きびしい面もあるようではあった。当然のことながら目の肥えた買い手からは「とても面白いアイデアだがフォーマットとしては未成熟だ」なんて声も。そこで秋元がいみじくも発した一言が含蓄深かった──曰く「アイドルとは〈納豆〉だ。日本的な臭みや粘り気が真っ当な外国バイヤーには最初は引かれるだろうが、その臭みこそが日本型アイドルの魅力であってそれを抜いたら意味はないんだってことを粘り強く説いていくしかない。だから彼らが引けば引くほどこちらはコンテンツとしての価値に自信が深まる」──まさにそれなのだ! なぜ浮世絵が日本より先に西洋で芸術的評価が高まったか(ってのはちょい広げすぎだが)、あるいは売る意志もなかった坂本九やPUFFYは売れてしまったのに逆に売る意志満々だった矢沢永吉や松田聖子や久保田利伸やドリカムや宇多田ヒカルはなぜことごとく失敗に帰したか、それは要するに日本芸能の〈納豆〉性を読み違えて──いや嗅ぎ違えていたからだ。彼らはみんな「日本で唄ってた型のままじゃ受け入れられないに決まってるから」あるいは「勝負するなら真価を問われたいから」といった理由によりフォーマットを海外向け仕様に「変えて」挑んで結局挫折しているのだ。それはつまり、どれだけ自国で自信深めてから出かけていこうと、新しい客向けに急ごしらえで芸風変えてしまったら結局「猿真似」としか受けとられないってことだ。というより、万万が一それで売れたとしても、ただ「売れる」ことだけが目的なのならそれでもまあいいかもしれないが、しかし終局的には自分のアイデンティティを捨てた上での猿真似で売れたところで一体何の意味があるんだろうかってことだ。逆の例でいえば、東方神起やBoaは韓国発でありながら仕様を日本向けに変えながらも爆発的に売れたが、彼らの場合には決して日本人の猿真似で売れたわけじゃなくその仕様を完全に自分のものにした上で売れてるんだってことに気づかなきゃいけない──しかもそれは何も言葉や習慣を完璧にマスターすればいいなんてことを意味するわけじゃない、その先にある〈何か〉を掴まないかぎりどこの国であろうと人の心には届かないってことだ(東方もBoaもいまだに日本語は片言混じりにすぎない)。…
と横道に逸れてしまったが(いやそっちが本筋でいいのかな?)、とにかくそんなわけで秋元康はとても面白いことをやろうとしているし、世界のバイヤーたちの前で唄い踊るAKB48の姿はとても新鮮でカッコいいものに見えた。普段ステージには口出ししないという秋元が彼女たちのリハーサルを見て珍しくダメ出しした──「ただ巧くやれればいいってわけじゃない。未知の世界の人たちに認めてもらうにはひたすら一生懸命にやってる姿を見せるしかないんだ」…思えばつんく♂は秋元が作ったおニャン子クラブをモデルにハロプロを作ってその芸道を進化させたが、それを長年横目で見ながら雌伏していた元祖=秋元がハロプロをさらに進化させて作ったものがAKBだった──なんてことはおれら素人にも容易にいえるが、しかしその裏に潜む意志は相当にガチだってことをこの番組を見て悟らされた。
ところで番組中でPUFFYをキャラモデルにした例のアニメに関し、それに関わる一切の権利が(つまりグッズや本や放映やDVD等のカネが)日本側には属さずアメリカ側に独占されてしまっていることが述べられていた。無論PUFFYの肖像権料とか使われてる楽曲の著作権料とかは──また元々のCDの売上などはいうまでもなくSONYのものだし──日本側に入りはするだろうが、しかし一番肝心なアニメ自体が全く日本側に利益をもたらしていないのは「そういうアピールが全くなかったからだ──つまり日本人にはそういうコンテンツを商売のネタにしようという意識が欠けている」とPUFFYをキャラに採用した「あの男」が小バカにしたようにうそぶいていた。そう、「PUFFYがアニメになって世界で大人気」などと浮かれてた日本のファンやマスコミは、実はまんまとハメられて糠喜びしてたにすぎないのだ! …つってもSONYがアニメ作ったわけじゃないなんてことは最初から判ってるんだからちょっと考えれば当たり前のことでしかないんだが、それだけに尚更やられてる感がorzorzorz…
ってことで悔し紛れにPUFFY on ようつべ by OREを2曲。
『JET CD』より大貫亜美ソロ「レモンキッド」↓と同じく吉村由美ソロ「哲学」↓。作詞はそれぞれ自身、作曲はともに奥田民生。