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飯野文彦『黒陰』/『影姫』

昨年後半なのであまりに今更ですが…飯野文彦さんより著書2作をいただきました。

ということで2作とも既に拝読。『黒陰(こくいん)』(竹書房文庫)は以前紹介した『「超」怖い物語──黒い本』シリーズ(http://d.hatena.ne.jp/natsukikenji/20080214http://d.hatena.ne.jp/natsukikenji/20081224)の続刊だが、これまでのジャック・ケッチャムor平山夢明を思わせる救いがたい残酷さ凄絶さの路線から少し趣を変え、比較的耳袋的?なストーリーが多く揃えてある。といっても勿論このシリーズの売りである、作者の分身たる怪奇作家「井之妖彦(あやひこ)」をとり巻く大枠の世界の中に作中作として各篇を鏤める手法は健在。「むしろ新たなスタート」と作者自身述べているように、本書からこのシリーズに初めて触れても差し支えないだろう。
一方の『影姫』(角川ホラー文庫)はこれまたがらりと趣が変わって、好色な女怪(にょかい)=「影女(かげめ)」の憑依に翻弄される男女のさまを描くエロチック・ホラー。ラストには妖怪を巡る民俗学的仮説を効果的に使ったりしていて、純文学系?からストレートなエンタテインメントまで多様な世界を巧みに書き分けるこの作者の異能ぶりの一端がここでも垣間見れる。













ついでのようで恐縮ですが、菊地秀行『〈魔法街〉戦譜』(祥伝社ノン・ノベル)と、アーサー・コナン・ドイルシャーロック・ホームズの冒険』(深町眞理子訳・創元推理文庫)もそれぞれお贈りいただきました(但しともに未読)。

前者はいわずと知れた超伝奇シリーズ〈魔界都市ブルース〉最新刊。「人気アイドルの時価1億のTバックが盗まれた!」(カバー裏より)という人を食った発端から秋せつらvs古代魔術師の展開へというのが興をそそる。あとがきにある独特の言い回しによる〈魔法〉を巡る作者の一家言も興味深い。
後者は版元が参考のためにと送ってくれたもので(ホームズ関連の仕事が複数控えてるので)、ついに開巻成った新訳版ホームズ全集の第1巻。時機的には今月公開予定の映画『シャーロック・ホームズ』に間に合わせる意味もあったに違いない。全巻深町氏が独りで訳すらしい。巻末には戸川安宣氏による詳細な解題あり。もしも次巻以降も贈ってもらえるなら、日暮雅通氏による光文社文庫版に続いて新訳版全集が2種揃うことになるが…そう都合よくいくかな?
飯野さん、菊地さん、東京創元社編集部さん、ありがとうございました!
シャーロック・ホームズの冒険 (創元推理文庫) 魔界都市ブルース 〈魔法街〉戦譜 (ノン・ノベル) 影姫 (角川ホラー文庫) 「超」怖い物語 黒陰 (竹書房文庫)