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井上ひさし / 『ひょっこりひょうたん島』

井上ひさし死去。http://www.sponichi.co.jp/society/news/2010/04/12/01.html
訃報の見出しの大方がそうなっているが、自分にとっても井上ひさしといえば『ひょっこりひょうたん島』だ。

子供の頃まじで夢中で見てた。ほんと好きだった。それ以前の『チロリン村』となるとうちにテレビが来て間もない頃なので充分に見れたとはいいがたいが、『ひょうたん島』は最初からどんぴしゃの世代で、精神形成に凄い影響受けた、冗談抜きで。だって『ひょうたん島』の真似事がしたくてグリコのオマケを山ほど集めて従兄妹たちと「ごっこ」やって遊んでたんだから──といっても『ひょうたん島』自体のごっこじゃなくて、とにかくああいうちっちゃな独立国で起こるてんやわんやの騒動をグリコのオマケたちに演じさせる──というよりそれに乗り移った自分が「なりきる」ってこと。『ひょうたん島』には子供にそんな変なことをさせる力があった。ただのお子さま向けのお行儀の良い「お話」じゃなくて、ストーリーがどんどん際限なく広がっていって──というか奇妙な悪乗りを無闇に連鎖させていって収拾がつかなくなってしまうようなへんてこりんでみょうちくりんな可笑しさ・楽しさ。「話」ってのは別にちゃんとなんかしてなくてもこういうめちゃくちゃなのでもいいんだなってことを子供心に自然と吹き込まれたように思う──それがいいのか悪いのかは別にして。
でも当然ながら当時はシナリオ書いてるのが井上ひさしって人だなんてことはまるで認識してなかったし、お話を作ってる誰かを「才能あるなー」なんていちいち思うはずもなく、ただ純粋に人形劇そのものを楽しんでるだけにすぎなかった──子供なんてものはそういうものだろうしそれでいいんだろうし。但しその一方で声の出演者たちの主立ったところはリアルタイムで認識してたから妙なものだが(藤村有弘、中山千夏熊倉一雄楠トシエ…)。
一番好きなキャラはやはり大統領ドン・ガバチョで、オマケでごっこをするときも必ず「大統領」というキャラは真っ先に決めてた。国民思いで優しい政治家なんだけどどこか悲哀があって… あと黒ずくめでカッコいいマシンガン・ダンディや、「♪魔女の中の魔女マッジョッリッカッ」とヒステリックに唄い踊る謎めいた美女?魔女リカもよかった。おっちょこちょいなお医者ムマモメムはずっと「ムマミメモ」だとつい今し方まで勘違いしてて(つまりマミムメモのアナグラムだと)、以前某誌にある原稿を書いたときそれを洒落たつもりで「夢魔見メモ」と題したことがあったが、あのタイトルは実は無意味だったわけで、何か空しく…
井上ひさしさんのご冥福を祈ります。
復刻版 ひょっこりひょうたん島 海賊の巻+魔女リカの巻 DVD-BOX