河内実加『天使のジレンマ』
綾辻・我孫子とくれば次は当然…というわけではないが河内実加さんのロマンス・コミック『天使のジレンマ』。
↑写真は一緒にいただいた既刊も。左から『お仕事は花嫁?』『五年後には愛してる』『神様を呼ばないで』で、右端が新刊(といっても昨年夏だが)の『天使のジレンマ』。原作はシャーロット・マクレイで、〈ハーレクインコミックス☆キララ〉の1巻(但し既刊分は宙(おおぞら)出版からの刊行)。
実は昔ロマンス小説の訳に関わってたことがあって(ハーレクインではなく今はもうないシルエット系だったが)、そのせいかこの分野に対しても偏見みたいなものは持ってない。「みんな似たり寄ったりじゃないか」とか「予定調和ばかりじゃないか」といった先入観を持たれがちだろうが、勿論そういう面はあるものの(おいおい;)、そんなこと言ったら実はどんな分野だって大なり小なりみんなそうだってことになるわけで、それよりむしろ星の数ほど出てるロマンス小説のひとつひとつがそれぞれの工夫と面白さを確保してるってことのほうに驚きを覚える。でもこの分野のを漫画で読むのは初めて。
というわけでこの『天使のジレンマ』の主人公はタイトルどおり本物の〈天使〉で、人間界で恋のキューピッドになるのが役目のはずだったが、落ちこぼれゆえに矢を射つのに失敗して自分が恋するハメに…というお話。こういうあからさまな〈幻想世界〉が介在するストーリーは珍しいんじゃないかと思うが、実はそれより河内さん自身があとがきで書いてるように謎解きミステリの要素が加味されてるところがミソだったりする。既刊3作も読んだが、どれにも作者のそういう趣味がそこはかとなく感じられるようだったのは気のせいだろうか。それにしても絵柄が整ってて巧いのには(当然とはいえ)あらためて感心させられる。
河内さんありがとうございました!