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我孫子武丸『眠り姫とバンパイア』

綾辻とくれば次は当然…というわけではないが我孫子武丸『眠り姫とバンパイア』。

といっても昨年の春に出た本なので今更の感全開だがご容赦を。
子供向け、というより童心向け(という解釈でいいんだろう)のユニークな叢書・講談社ミステリーランド〉の1巻。
〈眠り姫〉〈バンパイア〉というまさに不思議なもの好きの童心をくすぐるタイトルのとおり、夢みがちな女の子の〈父親〉をめぐる怪しい気配がときにミステリ・タッチにときにホラー・タッチに解かれていく。でもこれはミステリだかホラーだかってことにはあまり拘泥し過ぎないで読んだほうがいいだろう。そもそも我孫子武丸の小説はその辺のボーダーのところを巧く突いた作が多い(これは綾辻にも言えることだが)。また以前の『さよならのためだけに』(http://d.hatena.ne.jp/natsukikenji/20100414)でもそうだったが、大した事件でもない(?)題材をわざと扱ってサスペンスを高めていくところが我孫子武丸はいつも巧い。なお表紙&挿絵を描いてるMARUU(まるー、と読む)というイラスト作家の絵がなかなかよくて、この本に合ってる。
それから我孫子さんからは昨年初めに『監禁探偵』というコミックもいただいてる。こちらは当然原作担当で、作画は西崎泰正。変態男とそいつに拉致監禁されている少女が殺人事件に巻き込まれ…というお得意(?)の困った設定のミステリ漫画だが、コアな部分は本格的な面白さ。某所で次作に「拘束探偵」や「緊縛探偵」を期待する読者評があったのには笑った。いやほんと、きわどいほうへエスカレートするのもいいかも?
というわけで我孫子さんありがとうございました!
眠り姫とバンパイア (ミステリーランド) 監禁探偵 (マンサンコミックス)