.

ゴースト・ゾンビ・シャドウ

入手新刊本シリーズ。
H・R・ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』(鈴木克昌西崎憲倉阪鬼一郎南條竹則・今本渉訳 創元推理文庫)
マリリン・ロス『ダーク・シャドウ 血の唇』(尾之上浩司訳 扶桑社海外文庫)
ジョン・ワトスン『シャーロック・ホームズ 最強クイズ』(北原尚彦・尾之上浩司訳 扶桑社海外文庫)
『ハヤカワ・ミステリ・マガジン』8月号「特集幻想と怪奇 ゾンビって何?」

『HMM』は最近またちょっと息を吹き返しつつある?ゾンビの特集。ってことなんだがそのテーマ自体より、ロバート・シルヴァーバーグ、オーガスト・ダーレスの特集2短篇を訳してるのが植草昌実さんだというところに個人的には注目。そう、この名前にピンときた人には注目の理由が判るだろう、元名編集者の(いや今もそうなんだが)あの人だ。でその両作とも意外にもジョージ・A・ロメロの所謂リビング・デッドとはやや路線を異にするが、ゾンビというジャンル?の幅の広さが判るユニーク作で面白し。ただ特集という面で個人的に残念なのは…ゾンビ史に燦然と輝く?わが『死霊たちの宴』について触れられていないこと。…とはいえとうに絶版で近頃の若いモンは既に知らないだろうから無理もないがorz ふん、どうせおいらが悪いんだい…
なんていう拗ネオヘアーはさておき、尾之上浩司さんが扶桑社から同時に2点刊行という快挙! 『ダーク・シャドウ』は注目の吸血鬼映画の原点というノンストップ・ホラーとのこと。もう1点は著者がワトスン博士!という面白推理クイズ本。いつもユニークな企画で攻めるのは流石。
さて『ゴースト・ハント』は初訳物5篇を含む英国怪奇派の雄の初単独文庫版傑作集で、かの藤原編集室入魂の1冊。訳者が現今望める最良の布陣なのも心強い。
…というところで、ひとつだけ超個人的なことを。収録の1篇「目隠し遊び」は中で一番短くて掌篇とも言えるものだが、実はこの作、何を隠そうおいらがずっと昔出してた怪奇専門ファンジン『恐怖省』が初出なのだ。幻想文学会の会内誌という超ローカルなものではあったが、訳者の南條さんがこれとかM・P・シールの「ヘンリーとロウィーナ」とかの手書き原稿を自ら進んで送ってくれていた! 現物は物置をひっくり返さないといけないので今すぐには見せられないのが残念だが、今思えばよくあんなにお宝が集まってくれたものだと感謝せずにはいられない、何しろ南條さんの他にも菊地秀行さんの「出づるもの」とか竹本健治さんの「恐怖」など歴史的と言っても大げさじゃない傑作があそこを初出としてくれてたのだから。しかもおいらがそれを全部手書きで書写して誌面作りしてた!(その点では素原稿を綴じるだけだった倉阪さんの『幻想卵』より労多しと言える) 尤もそんなことを知ってる人はごくごく限られてる上に歳月も経ち過ぎてるので、それらの作品群がアンソロジーに採られても『恐怖省』が初出誌として紹介されるなんてことはまずありえないが、まあそれは同人誌やファンジンには付き物のことだろうから仕方ない。おいらの密かな懐旧的自己満足ってことでいいんじゃないか。とまあそんなわけでこの本の刊行には個人的嬉しさがちょびっと入ってるというお粗末…