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やれやれまたか。
聞いて呆れる。
で済めばまだいいんだが。
ジャック・カーリイ『百番目の男』を評して「混沌とした現代社会」がどうのこうの
と書いてる例の「文芸評論家」大先生のことだ(正確に引用したいのになぜか手もとに
見えなくなっちまった、『週刊文春』の例の号)。
コントンとしたゲンダイシャカイ。
こういう歯の浮く陳腐で無意味な台詞を挟み込むとブンゲイヒョウロンとやらが
できあがるらしいないわゆるミステリ業界ってところでは、と知って嫌気がさしてから
もう十数年経つが、案の定大先生の周辺では今にいたるも事情はまったく変わっていない
らしい。
まさに陸の孤島だな、「あのへん」は(ちょうど今テレビで津南町の豪雪報道やってるので
連想した)。
ことのついでに「バカミス(笑)」ときた。念のために言うと、このカッコワライも大先生が
書いてるものだ。今さら『百番目の男』に「バカミス」をいちいちくっつけて、
おまけに今どき「バカミス」にいちいち(笑)をくっつけてしまうという、
大先生のコントンとしたゲンダイシャカイなセンスには脱帽するしかない。
おれが訳したエドワード・リー「ICU」を「勧善懲悪」と解説したときも思ったものだ。
やれやれまたか、と。
エドワード・リーほどその一語から遠い作家はいないっつーのに。長年何千冊もの犯罪小説を
読んで一流誌で書評やってきていながらなに考えて生きてきたのかねこの大先生は、と。
聞いて呆れる、と。
それで済めばまだいいわけで。
問題は、脱帽すべきセンスの鉾先がこっちに向けられたときに、果たして…