わが偏愛的女優痴話4 米倉涼子
『けものみち』の視聴率が堅調に推移?している記念に米倉涼子。
といっても格別に高いというわけじゃない。あくまで堅調だ。それでも初回から3回とも
16パーセント台を落ちず、しかも鳴り物入りだった裏の『白夜行』を毎回上回っているのは、
健闘というよりすでに成功といっていいだろう。当然ながら米倉にとっては、実質的な
出世作となった『黒革の手帖』の路線を踏襲してのキャスティングだ。同じ枠、同じ原作者、
同じ悪女もの。ただし『けもの』の悪女のほうがはるかにたちが悪い。『黒革』では
横領と恐喝程度だし、どんなに落ちても男に体を許さないという一線を守り抜く女だったが、
こちらは体の不自由な夫を生きながら焼き殺したうえに、大物フィクサーの愛人となって
のしあがろうとするという、もはや到底人間としてあるまじき道に踏み迷ってしまった女だ。
つまりあちらは地獄に落ちまいと必死に生きる女だったが、こちらは最初から地獄に落ちている。
それだけになにかしら陰惨な凄みが要求される話だが、これまでのところはかなりいい線を
いってる、脚本も演出も米倉自身も。ただし彼女には越えなければならないハードルがある。
かつてNHKがやった名取裕子&和田勉版『けものみち』だ。これはリアルタイムで見て、
ところどころ記憶に残っている。なんといっても西村晃と名取の濡れ場の凄さが、今回は
当初から米倉に課されたハードルとして週刊誌などが書きたてた(当然中高年男性読者
向けの煽情記事として)。これは米倉自身かなりのプレッシャーがあることを告白しているが、
この点に関するかぎり今までのところは名取の一世一代の怪演(艶)に軍配があがるだろう。
それはさておいても、米倉は近ごろ珍しく「悪女」を演じてサマになる女優で、これは
彼女のいかにも蓮っ葉そうなルックスとか男っぽい豪快な性格とかがそう見せるとも
いえそうだが、ひょっとするともっと深いところに遠因があるかもしれない。というのは、
彼女にもこれまた過去の男をめぐって隠されたヤバいスキャンダルがあり、しかもそれが
小向美奈子や藤本綾など足元にも及ばないほどのヤバさのため、今のところ事務所オスカー
の力もあってか固く封じられて表には出てこない(アングラメディア以外は)ので、真偽は
わからないが、火のないところにともいうから、そういう過去の闇が女優としてのありように
にじみ出ているということもあるかもしれない。
『黒革の手帖』は一度スペシャルとして土ワイ化され(『白い闇』)、あまりに土ワイ色が
強かったためファンには不評だったが、筆者はそれなりに面白かった。
『女系家族』は『白い巨塔』のあとを狙ったものの〈今〉の世間にリンクしづらいネタで
苦戦したが、これまた個人的には面白かった。『非婚家族』は夫の昔の恋人(鈴木京香)との
三角関係に悩む人妻役。月9『ラブレボリューション』では江角マキコとダブル主演という
触れ込みだったが、実質控えに回っていたのは否めない。主演作『整形美人。』では
ブス(北陽虻川)の整形後という設定で、両者のあまりの落差にやや萎えた。初期の『ストレート
ニュース』では新米キャスター役。ほかに有名なところで『奥さまは魔女』の魔女妻があるが
未見。あともちろん大河ドラマ『武蔵』でのお通役(海老蔵とは最近別れたらしく、目出度い)。
またごく初期に月9『天気予報の恋人』(佐藤浩市稲森いずみ主演)で同僚(ナイナイ矢部)に
片思いする地味めな眼鏡の事務員役があり、台詞がほとんどなかったもののけっこうよかった
のだが、DVD化はされていないようだ。
映画ではバイオレンスアクション『GUN CRAZY』第1弾(室賀厚)で惨殺された父の復讐を
目指す女役で主演。初主演作『ダンボールハウスガール』では大金を失ってホームレスに
なってしまう元OL。今思うと『黒革』の逆バージョンか。なお『黒革』は舞台版もやるらしい。