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本ミス

容疑者Xの献身 ニッポン硬貨の謎
11/10(土)上京し本格ミステリ作家クラブ総会および第6回本格ミステリ大賞
贈呈式出席。大賞には今回はどうにか投票参加できてよかった(小説部門
のみだが)。受賞作は小説部門は、直木賞はじめ各栄冠総なめの感ある
東野圭吾『容疑者Xの献身』。評論部門は北村薫『ニッポン硬貨の謎』。
贈呈式での東野の喜びの言葉で、「推理の難しい本格がよしとされる傾向が
あるなか、自分の年老いた父でも推理できたわかりやすい本作がこの賞を
とれてよかった」という主旨の発言があり、祝辞に立った推協の大沢在昌
それについて「深い意味がありそう」といったニュアンスのことを言ったよう
だったが、東野自身の発言はともかく、それをあの場で本格クラブへの皮肉
めいた方向へほのめかすというのは、どうなんだろう。しかもそのあとは
本ミスや受賞作とは関係ない、例によって推協賞の話。やはり大沢さん、
本格ミステリばかりがもてはやされる昨今の風潮は面白くないんだろうな。
ちなみに筆者の一票は『X』には投じなかったが、そのわけは推理や謎が
わかりやすいかどうかといったようなことじゃまったくない。どうであろうが
要は面白いかどうかでしかない。そしてその面白さが本格ミステリのベクトルへ
大きく向かっていると思った作に投票したい、それだけだ。なんだか
いい子ぶってるような言い方だが、ほんとのことだ。つまり『X』はどうも
もうひとつ面白くなかったってこと。何か毒が足りないような、それこそ
いい子になりすぎてる(この作家にしては)作のような気がして。選んだのは
石持浅海『扉は閉ざされたまま』で、こっちのほうが小説としても本格としても
はるかにわくわくさせられた。
評論部門の『ニッポン…』は決定後、というか上京前にやっと読んだ。
小説なのに?と思いつつ読みはじめたが、クイーンについての分析や
紹介史等が作中および注記にてんこ盛りにされてて、なるほどそういうことかと。
マニアックながらも、ミステリファンならクイーンをそんなに深く知っていない
読者(筆者のような)でも楽しめると思う。小説としても面白い(これまた
『X』よりかも?)。ところで本作は受賞者がクラブのトップということで、
それを意地悪く皮肉るやつがたとえば例によってアマゾン評にいたりなんか
するわけだが、まったくバカげてる。そういう頭の足りないやつらにたやすく
言われるに決まってるそういうつまらなすぎることを、最初から中傷や非難を承知で
あえて創られたクラブがいちいち気にしたりダメージ受けたりすると思うかね?
そういうわかりやすすぎる悪口を言わずにいられないやつらが自分のバカさを
さらすことになるだけだ。
ところで大沢在昌も言ってたが、霞流一の贈呈式司会はいつもながら面白すぎ。
今年かぎりってのは残念。次の人はプレッシャーがあって大変だな。
二次会は北村薫組にくっついていったら、大入りで店の外でパティオ?っぽい
雰囲気になったりなんかして、ああいうのも風情があっていいものだ。通行人
たちが何なんだろうとじろじろ見てたり。