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血と薔薇

血と薔薇コレクション 1 (河出文庫) 血と薔薇―コレクション〈2〉 (河出文庫) 血と薔薇コレクション 3 (河出文庫)
もういつのまにか出たのは去年ということになってしまったが、
血と薔薇』全3巻が文庫で出たのには驚いた。事前に知ってたわけじゃなく、
たまたま本屋で1巻目が出てるのを見つけて、そしたら毎月出るらしいと知り、
出るたびにすぐ買った。今でも天声出版の原本の古書価を検索すると、揃いで2万とか
3万とかする。もっと高くてもいいような気がするが、そんなところなんだろうか。
ただし中に全4巻という場合があって、これは4巻目というのが澁澤龍彦(この彦と
いう字は正確なのが出せないが、Wikipediaの真似すれば偐って字の右側なんだな)
が責任編集から外れたあとのやつってことだろう。どこかのサイトに書影が出ていたが、
見てくれからして明らかに前の3巻と違う。だから澁澤本を集中的に出している
河出文庫としては、その4巻目ってのはうちとは関係ないから出さない、ってこと
なんだろうな。
この『血と薔薇』の現物を見たことはたぶん一度しかない。昔桜新町の安アパートに
住んでたある友人の部屋に揃いであったもので、だからそこを訪ねるたびに視界に
あったと思うが、手にとって中をめくってみたのはたぶん一度だけだ。
その友人というのは澁澤を敬愛していたが、澁澤萌えとか澁澤オタクという感じ
じゃなく、純粋にまじめに澁澤の業績を尊敬するというタイプだった。あるとき
誰かが「『血と薔薇』が神保町で3万で出てたよ」と言ったら、そいつがモロ手を
あげて「バンザーイ!」と叫んだのを憶えてる。その後その彼とはいろいろあって
絶交してしまったが……
それはともかく、そのとき一度だけ中を覗いて記憶に焼きついてたのが、澁澤自身が
モデルとして写ってる写真があった、ということだった。で、このたびの文庫版を
見てみると、たしかに記憶どおりの一枚があった。最後の3巻目「愛の思想」特集号で、
冒頭の篠山紀信撮影の芸術写真「制服の処女」の中の、3点目のSM部屋風の構図の
やつで、真中あたりのカーテンの隙間から顔を出して秘儀を覗いてる男、これは
明らかに澁澤だろう。だがそれ以外の写真にも写っているのかどうか? 当時
たしか、6点目の手術室っぽい構図のやつで、怪しげな看護婦と包帯男にメスで股間
狙われてる顔の写ってない患者──これもひょっとして?なんて思った記憶がぼんやり
あるが、さすがにそれはないだろうな。ちなみにその一連の写真で、今昼ドラ
『美しい罠』でいい味出しまくってる麿赤兒もモデルやってる。
文庫版はすべて白黒だが、写真・挿画をカラーにしたりして凄く高い本にするより、
このぐらいでいいのかもしれない。本物が持ってた雰囲気はけっこう巧く伝えて
るんじゃなかろうか(一度しか見たことのないやつが言っても説得力ないが)。
とにかく凄い雑誌があったものだ。