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わが偏愛的女優痴話8 櫻井淳子

natsukikenji2006-10-18

わらの女 【新版】 (創元推理文庫) ショムニ FINAL DVD-BOX Blanc―桜井淳子写真集
録り溜めておいた『美しい罠』をようやく最終回まで見終えた。残念なことに一回だけ録り逃したのが初回だ。それはともかく、東海テレビのこの枠をこれほど通しで見たのは初めてだ。なぜ見たかと言えば、主演が櫻井淳子だからというのがもちろん最大だが、二昔も前にNHKでやった銀河ドラマ(or銀河テレビ小説?)『わらの女』(大空真弓主演)が大好きで、その流れでの興味もあった。が、それはあとにして…
櫻井淳子を初めて見たのは、かなり前に深夜のバラエティで美輪明宏と若手女性タレントたちによるトーク番組があって、その女の子たちのメイン的な位置にいたのが彼女だった。なんて番組だったのか、検索してみたがまだちょっとわからない。芸映所属ってことでもともと女優志向らしく、その後はもっぱらドラマ出演が相継ぐ。が、実は彼女の出た連ドラは数的には意外と見ていないことがわかった。見てるのは一番名前を売るきっかけになった『ショムニ』シリーズ、初主演の『板橋マダムス』(これは全部は見ていない)、結婚相手(AP)を見つけることになった『おみやさん』シリーズ、同じテレ朝の大ヒット作『特命係長只野仁』シリーズぐらいだ。
で『美しい罠』だが、小説『わらの女』はあくまで〈原案〉であって原作という扱いではないようで、男女が老富豪を騙して遺産を奪おうとするが、女も男に騙されていて…という大枠は借りているものの、内容・細部はまったく別物だ。それはともかく、最大の見所はなんといっても櫻井演じるヒロインの悪女ぶりだ。カネのためなら自分の身を削ることも辞さず、その一方でふてぶてしい度胸強さで男たちを手玉にとるとんでもない女を文字どおり体当たりで熱演してる。同じ悪女役でも、米倉涼子のように持って生まれたキャラで最初からいきなり入れた役どころじゃなく、女優あるいは女として(ってのもこそばゆい言い方だが)変遷を経た末に辿りついた感があるのが何とも味わい深い。回を追ううちに脇役陣にもだんだん思い入れが出てくる。騙しの張本人・高杉瑞穂、騙される老富豪・麿赤兒、その息子・大沢樹生、大沢のフィアンセ・木内晶子、富豪の使用人&側近・鶴田忍・山口美也子片岡弘貴、山口の息子・水谷百輔。とくに高杉瑞穂がいい。『新・星の金貨』で注目したもののその後伸び悩み感があるが、もっと出てもいいと思う。木内晶子も『L×I×V×E』の頃から見ると、これほど堂々とした女優になるとは思っていなかった。もちろん麿の怪演も特筆ものだし、鶴田ら周辺人物にもそれぞれ重要な意味合いがあって面白い。また人間関係は原作に比して数層倍に錯綜してる。ただ東海テレビお得意の〈荒唐無稽さ〉がそれほどどぎつくないためか、世間的にはいまいち広まっていない。その辺を慮ってか中盤から櫻井vs木内の女のバトルにも比重がかけられるようになった。DVD化されるといいと思うんだが、市場的にどんなものなんだろうか。
ところでかつてのNHK版『わらの女』だが、これはテレビ史的にもきわめて重要で、現今のミステリー・ドラマの先駆けになった作だと思う。大空真弓一世一代の熱演。共演高橋幸治加藤嘉草野大悟。とくに加藤の〈死体〉の演技はゾッとさせた。ラストは悲劇的ながらも原作とは大きく異なり、またミステリー的な工夫も入ってた。再放送され、筆者は2度とも1回も欠かさず注視してた。これこそ今に蘇らせてほしいドラマだ。『美しい罠』と較べてどうこうは言えない。どちらもそれぞれ非常に面白かった。