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溶ける時計、あるいは実相寺昭雄

屋根裏の散歩者〈完全版〉 [DVD] 風 DVD-BOX 帝都物語 [DVD]
最強のウルトラマン・ムービーシリーズ Vol.2 実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン [DVD] DVD 怪奇大作戦 Vol.1
自分は『ウルトラQ』『ウルトラマン』に世界一深く影響された人間だと思っている。いや、思っているだけじゃない、事実そうだ。これらのドラマを初放送時にリアルタイムで初回から最終回まで一度も欠かさず見ていたあいだ、おれはテレビを見ていたんじゃない、テレビに出ていた。おれは万城目正だったし、ハヤタだった。だから影響されたといういい方もおかしい。最初から血であり肉だった。だからあの頃テレビ画面に映っていたのはいつもおれ自身だった。(ついでにいえば、それらよりさらにおれ自身だったのは『Q』の前の『隠密剣士』だし、それよりまたさらにおれ自身だったのは同じ日曜のPM8:00『若い季節』であり土曜PM7:00『7時にあいまショー』だが、それはさておき)
みんな忘れているが、『ウルトラマン』のすぐあとに『ウルトラセブン』が始まったわけじゃない、両者の間の『キャプテンウルトラ』も変わらぬ夢中さで見てた──なんか微妙にテイスト違うな〜と子供心に思いながらも。円谷プロじゃなくて東映だなんてことを知ったのはあとになってからだ。同様に、たとえば実相寺昭雄という名前の人が『風』(栗塚旭なお健在)『ウルトラマン』『セブン』その後の『怪奇大作戦』(いずれもごく自然に熱中してた)で演出やってたなんてことを認識したのは、ずーっとあと、つまり大人になってからのことであるにすぎない。見ていたときはただひたすら映像を注視していただけだ、監督が誰だろうと制作会社がどこだろうと、そんなこと見ている当の子供に関係あるはずもない。全国の無数の無名の子供たちとまったく同様に、おれはただ面白いテレビをひたすら見ていただけだ。それでも、いや、だからこそおれには断言できる、世界中の誰よりもそれらのテレビにおれは深く影響されてると。
 逆転現象が起こって久しい。80年代末ぐらいからなんだろうか、急に復古運動が興りはじめて(『11PM』だったかで『ウルトラ』関係者の誰かが「当時見ていた世代がようやく創る側に回ってきたためだろう」と冷静にいってたのが印象的だった)、急激にソフト化が進歩発展し、おれたちよりも若い世代になるほど旧い世代が見てた映像に詳しくなる、というある意味奇妙ともいえる状況が以後ずっと続いてる。若者たちのほうがおれたちよりもはるかに多くのトリビアを持ち、はるかに多くを語れるのだ! おれたちはもうただ黙して思い出すだけ…いや、もうそれもままならない。あんなに夢中になってたのにもう忘れ始めてるから。『ウルトラ』物のソフトは何十年も1度も見ていなかったが、数ヵ月前なぜか『Q』数話を試しにレンタルして久々に見てみたが、ナメゴンもゴローもあの頃の生々しい印象を決して裏切りはしなかったものの、にもかかわらず妙に冷めてしまってる自分がいて、嫌になって見るのをやめたということがあった。
それと逆のことだが、今朝の『とくダネ!』で、いつもは「またかよ」とうんざりするほど何にでも首を突っ込んでる小倉智昭が、ウルトラ物の映像を「今初めて見た」といったのにも驚いた。わずか数年世代が違うだけでそんなにも決定的に違うものかと。けどそんなもんだろうな、おれだって『仮面ライダー』ともなれば、下宿先の子供に付き合って無理して?見てたという程度だったから。
帝都物語』はテレビ放映で見ただけだから、公開時に劇場で見た実相寺昭雄映画は唯一『屋根裏の散歩者』のみだ(たまたま上京時、新宿の小さな小屋での単館上映で、浜村純初主演『押絵と旅する男』と併映だった)。映像がどうとかいうムツカシイことはまるでわからないが、宮崎萬純(当時この字だったと思う)の狂気美は身震いするほどよかった。
『ALWAYS三丁目の夕日』を録画しつつ『ドクター小石の事件カルテ③』を見ながらこれを書いてる今、折しも嶋田久作が犬神佐兵衛ばりの謎めいた大往生を遂げるところからドラマは始まった。
合掌。