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ファビーニョ

natsukikenji2006-12-09

ファビーニョはよく転ぶ。ほんとによく転ぶ。でもファビーニョは決してシミュレーションなんかやらない。でもよくわかってない審判は、ブラジル人だからって先入観があるせいでなかなか反則をとってくれない。でも反町元監督も声を大にしていってたとおり、ファビーニョほどの人格者もそういない。ほかのブラジル人選手とは明らかに何かが違うってのがブラウン管越しにもわかる。いつも全力疾走。いつも最後まで諦めないプレー。暖かな人柄。弛みないファンサービス。人をはぐらかさないメディア対応(はぐらかし屋の代表というとオシムだ)。反町は「ファビーニョは日本人だ」といってたが、ほんとに彼ほど日本人な外人選手はいない。それは彼が納豆を食えるとかいう意味だけじゃなく、無類の誠実な人間性、そして裏表なく日本を(新潟を)愛してることだ。
12/2(土)、2連敗12位で迎えたリーグ最終節対大宮戦、0-2後半途中からMFファビーニョがピッチに。攻めても攻めても得点が入りそうにない絶望的な状況のままやがてロスタイム、4分のはずが5分すぎてもまだ笛が鳴らず(主審は悪名あるらしい某氏)大宮勢がじれる中、ビッグスワンを埋め尽くした4万大観衆はひたすらファビーニョの名を連呼する。それはこのとき彼がすでに解雇をいい渡されていたからだ。これが先途という瞬間、中央FWエジミウソンから左へ流れたMFシルビーニョへ、シルビーニョから中央へ猛然と走り込むファビーニョへ。彼らしく転びながらの左足一閃、ボールはゴール右隅へ吸い込まれた。期せずしてのブラジル人トリオによる土壇場ギリギリでの意地の一発。その瞬間、スタジアムは勝利したかのような、いや優勝したような大歓声に包まれた! それはチームがわずかな意地を見せられたからの歓呼じゃない。誰よりもすべての人々に愛された男に、みんながそうなってほしいと祈っていたとおりの奇蹟がまさにそのとき起きたからだ。それは餞とか花道とかいう形だけの意味じゃない、最後までアルビのために戦ってくれると誰よりも信じられてる男が、本当にそのときにいたってもなおそのとおりの姿を見せてくれたからだ。ファビーニョがいつもどおりなおも必死に駆け出している中、そのまま試合終了、1-2で3連敗、目標だった7位に遠く届かない14位で今季終了という惨憺たる結果が決定した瞬間にもかかわらず、誰もが笑っていた。みんなが肩を叩きあって祝福しあってた。その訳はただ一つ、最後の最後で「アルビのファビーニョ」の何よりの存在証明がみんなの心に刻まれたからに他ならない。そして彼はおれたちにまた一つ何かを教えてくれた。
その後のファン感謝祭などでのサポとの触れ合い。心からの笑顔でありがとうを繰り返すファビに、どこかのかあちゃんが(新潟のサポーターは不細工なサッカーオタクどもじゃなくて、子供から年寄りまでのほんとの市民ファンで成り立ってる)土産を入れた紙袋を手渡し、満面の笑みで「4年間ありがとね」といって彼の手を叩いてた。
来季まだJに残って他チームに雇われたなら、ファビには是非また今までと何も変わらない精一杯のプレーで、弱いアルビをこてんこてんにのしてもらいたいものだ。でもまだありがとうとはいわない、今日9日天皇杯札幌戦こそがファビの本当の最後の雄姿になるはずだから(ちなみにこの試合はJ1で唯一下位リーグチームに敗れた千葉の選手たちがアマル監督の命令により自腹観戦することになってる)。そして彼は明日帰国する。