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植木等

50周年記念ベスト 日本一の無責任大作戦
映画はリアルタイムでなど何一つ見ていない。見られる環境にいなかったからこれは仕方のないことだ。だが『シャボン玉ホリデー』も『夢であいましょう』もなぜか見ていないというのは生涯の禍根だ。『シャボン玉』は新潟ではやっていなかった(?)からかもしれないが、『夢で』はその気になれば見られたはずなのだ。見ていたのはただ『若い季節』と、あとは『紅白歌合戦』を初めとする歌番組のみ。にもかかわらず、植木等は最も強く影響された芸能人となった。大瀬康一よりも、おそらく橋幸夫よりも。やはり『若い季節』だ。細部はほとんど憶えていないのに、なぜか錚々たるキャストの顔と立ち姿の活き活きとしたありさまが脳裡に焼きついている。あのドラマで、芸能界での渡辺プロの存在の大きさがすでに子供心に刻まれた。クレージーキャッツ、ザ・ピーナッツ、三人娘、みんなあのドラマで知った。その中で、植木等は出てくるだけで常に画面を、視聴者の眼を、独り占めにした。筆者の芸能界への憧れはそこから始まった。
いわゆる〈無責任シリーズ〉がなかなかDVD化されないなと不思議に思ってた時期が長く続いた(主なものはそれ以前にビデオで見ていたが)ので、出始めると同時に『ニッポン無責任時代』『ニッポン無責任野郎』『クレージー作戦・くたばれ!無責任』『大冒険』を即買った。監督は『くたばれ』坪島孝、他3作は古沢憲吾。植木のあの豪快な演技の裏に古沢の豪快な指導があったことを植木自身がインタビューで語っていたのを思い出す。
またずいぶん昔だが、テレビの劇場中継で植木主演の『王将』(というタイトルだったと思う)をたまたま見て惹き込まれたことがあった。シリアスな演技がとても嵌まってるのに驚き、とくにラストの老残の坂田三吉の惨めぶりが素晴らしかったのが濃く記憶にある。
亡き祖父に(失礼ながら)昔からとてもよく似ていた植木さん、謹んでご冥福をお祈りします。(※末尾の一行、故あって「安らかにお憩みください」より敢えて変更す)