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都はるみ・竹内まりや・松田聖子

REQUEST 北の宿から/大阪しぐれ Windy Shadow
昨日(4/11水)夜たまたま3人の超有名歌手が相継いでテレビ出演している時間帯に遭遇した。都はるみ『人生の歩き方』(NHK教育)・竹内まりや『SONGS』(NHK総合・新番組)・松田聖子NHKスペシャル松田聖子女性の時代の27年』(総合・再放送)、だ。いずれもNHKなのもたまたまだが、いずれも途中から見るにとどまったのは惜しかった。短時間ながらそれぞれに面白かった。


まず都はるみだが、恩師市川昭介がレコード会社を移籍し、新たに阿久悠小林亜星のもとで唄うことになったときの逸話。はるみは市川を生涯の恩師と尊敬しながらも、それを機にあの「唸り」のイメージからの脱皮を図りたいと密かに思っていたが、提供される曲は依然規定路線の威勢のいい「はるみ節」。そこで思いきって自分の希望を伝え、できあがったのが「北の宿から」だった。はるみはこの歌にほとんど「唸り」を入れず(制作サイドの要請で唄い終わりにちょっとだけ入れたらしいが)、それまでになかったしっとりとした女らしさで唄いあげ、息の長いヒットとなってレコード大賞を獲得した。するとかつての恩師市川から電話があり、「おめでとう」と祝福されるのかと思いきや、「あの唄い方はないだろ」といきなりのダメ出し。〈♪あなたかわりはないですか〉の最後の「か」が雑だというのだ。それ以来はるみは「か」を吐息のようにかすかに、心をこめて問いかけるごとく唄うよう努めているという。


竹内まりや。独身時代には『夜ヒット』等テレビによく出てたからある程度は馴染みがあったが、結婚後ほとんどメディアに出なくなったせいで妙に神秘化されたイメージがついた。しかし滅多にない映像で見る彼女は、あまりにも普通の人だった。とくにニューミュージック系のアーティストというと、日常でもぶっ飛んでるんじゃないかとか(井上陽水はモロそれだろう)妙に気難しいんじゃないかとか(大貫妙子はモロそれだ)つい思ってしまうが、竹内まりやに限ってはそんなことがまったくなくて、話すこともリアクションも風采も総てがまともだ。まともすぎて拍子抜けするほどに。「駅」を熱唱している貴重なライブ映像があったが、その姿がこれまたあまりにもまともだった。人が真似できないような変わった唄い方とか、独特すぎる振りとか、そんなのはまったくない。聴き手が自然にイメージする「駅」を唄う竹内まりやの姿が、そのままそこにあった。大いに、というかますます好感を持った。余計なことだが、筆者とほぼ同年齢だってのにも驚いた。


松田聖子。いわずと知れたこの人が、デビューからまだ30年と経っていないというのが意外な感じだった。ほんとにアイドルとしてこの人ほど古びない例はない。昭和の三大流行歌歌手として美空ひばり山口百恵と並んで聖子が挙げられるが、彼女がもしも亡くなったり完全引退したりしたならば、他の二人を大きく上回ってとんでもない伝説的存在になるだろう。連続チャート1位記録の御三家といえば聖子・B’z・浜崎あゆみだが、15年後には他の2組の曲のほとんどが忘れられているだろうのに対し、聖子の曲は多くが依然世の中の記憶に濃く残りつづけているはずだ。久しぶりにテレビで見て、相変わらずなのを心強く思った。永遠のライバル中森明菜もカバーアルバム『歌姫』シリーズで気を吐いてるようだし、そこらへん頼もしいことだ。