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『金色の翼』最終回

natsukikenji2007-09-28

『美しい罠』ではラストのラストにいたるまでかなり激しいシーンの連続で驚いたというか思わず笑ってしまうほどだったが、『金色の翼』の最終回は終盤のまとめという感じで比較的おとなしめに収束した。ただそこにいたるまでの数回の展開にはどんでん返し的ネタがいくつか仕込まれていて面白かった。伏線の回収もいくつかあってなかなかよかった。だがそれ以上に、毎日見続けているうちに、主たる舞台となっている場所つまり孤島の岬に建つホテル〈シー&スカイ〉に妙な愛着が湧いてきた。『美しい罠』での湖畔の別荘もよかったが、今作では島とホテルの所有権を巡る争いまで盛り込まれたりしていたためか、より〈場所〉の印象が強かった。迫田が突き落とされた崖の上のバルコニー、よく情報交換の場となった円形の小ホール、パーティーでセツが見事なダンスを披露した大ホール、修子までが腕を競ったプールルーム、柱に視力検査表が貼られた槙の使用人部屋、修子と槙が密会のメモを砂に埋め合ったサボテンの植え込み……繰り返しかわるがわるそれらのポイントが出てくるにつれて、この島に行ってこのホテルでくつろいでみたい! という思いがどんどん強くなった。これもまた「館モノ」の本格ミステリに通じる興趣だったろうか?

ところで午後の帯ドラマというと、中でも東海テレビの昼ドラというこの枠は、芸能界の墓場などと揶揄されることがある。もちろんからかって大袈裟にいってのことという面はあるにせよ、一面の真実を突いてもいる。TBSの同時間帯枠から井上真央が大ブレークしていったような例は、東海のこの枠からはほとんど発生しえないと思えるからだ。『真珠夫人』『牡丹と薔薇』等をはじめ話題作をいくつも出してはいても、それらで評判をとったたとえば小沢真珠横山めぐみらがゴールデンの連ドラでも主役を張れるかというと、なかなかそうはいかない。このたびの国分佐智子も同様だ。だから本気で大ブレークを狙っている若手女優は、たとえオファーがあっても本人や事務所が受けないだろうし、オーディションがあっても避けるはずだ。そういう予想が立つから、制作側もオファーを出す女優選びには「慎重」になる、というある種の悪循環があって、そこからそんな揶揄が生まれるようになったと思われる。その意味でたとえば『美しい罠』の櫻井淳子はかなり微妙な線だったんじゃないか、一度は夜の連ドラで主演を張った素材だから。あとは本人が思いきって(あるいは割り切って)受けるか否かにかかってくる。次作『愛の迷宮』の主演宮本真希も若干微妙な例かもしれない。彼女も巧く立ち回ればもっといい枠での主演クラスの仕事がとれるようになってもおかしくないキャラのような気がする。だがそんな分岐点でスパッと割り切ってきた東海昼ドラの主演女優たちは、みんな偉いと思う。ある意味女優の鑑だ、というといいすぎかもしれないが。
(写真は〈シー&スカイ〉の看板の前での肘井美佳)