都はるみ
10/21(日)於長岡市立劇場。実は都はるみにはある時期から懐疑的だった。つまり一度引退したのち復帰(それ自体長州力や大仁田厚みたいで首捻り物だったが)してから、何だかよからぬほうへ変わっちまったような感じをテレビでたまに見かけるたびに抱いてた。つまり、若い頃にも勝る激しい唸り節偏重に加え過度のパフォーマンス(髪型や衣装も含め)によって老いと衰えを不自然に隠そうとしてるんじゃないか、というか隠してもいいんだけどそればかりに気をとられて、つまりけれん味ばかり優先して抒情性を失ってるんじゃないかと懸念していたのだ。そう思うのも、そもそもは一番好きだった「北の宿から」を妙に唸り節っぽく唄うようになったと感じたからだった(といっても別に唸り自体が嫌いなわけじゃないんだが)。
しかしそんな素人の小生意気な疑問は、今回初めてライブを見て吹っ飛んだ。凄いわやっぱこの人は。歌はもちろんだけど、パフォーマンスもMCも全てが破格だ。客がびっくりするような体の動き(イナバウアー気味のも見せてた)で舞台中を駆け回るんだが、そのエネルギッシュさをナマで目の当たりにすると、ほんと凄いエンタテイナーなんだと思わせられずにはいない。あっけにとられて笑ってしまうほど。何年か前増田明美が日テレの物真似番組で「好きになった人」やったとき、尻振りながら後ろ向きに動いてくのが可笑しくて印象に強くあったが、あれは決して大袈裟なんじゃなく本物も実際にそのとおりをやってるんだと知った。それからとにかくヒット曲有名曲が多すぎるわけだが、それをできるだけ沢山聴かせようとする姿勢がまず好感持てる。贈り物タイムなんかなくて(それどころか「贈り物は場内に持ち込まないで」と事前アナウンスしてた)休憩挟まず通しで2時間、しかも専属司会なんてのもいなくてMCはすべて自分でやり、途中の着替え時もバンドが間をとるだけ。ロビーでもグッズ販売はなくてCDとDVD売るだけ。その代わりライトとセットの効果はこれまででピカ一だった。とにかくそうやってライブそのもので楽しませることに徹底するってのはいいよね(その点で心底感心した例は他にはマツケンぐらいだ、もっともそっちはヒット曲が一つしかないが)。
肝心の歌はといえば、一年前に亡くなった生涯の恩師市川昭介の作品(初期から遺作(新曲「蛍の宿」)に至るまで)中心に、文字通りこれでもかというほど「唄っとくべき曲・聴かせとくべき歌」を遺漏なく詰め込んでたのがこれまた凄く、ほんと満腹感あった。亡くなったといえば数は少ないものの阿久悠作品もあるが、その一つで最大のヒット曲「北の宿から」は、たしかに往時とは歌い方若干変えてるんだろうが、こうしてナマで圧倒的に聴かされてしまうと全然違和感などなく、むしろ今の唄い方ゆえに自然に惹き込まれたようだった。「年齢に応じた節でいいじゃないか」と師匠市川に言われて吹っ切れたといってたが、たしかにそれで正解だってことなんだなやっぱ。
あと余談気味ながら面白かったのが、最前列(かぶりつき?)に陣どってた一組の初老風カップルが、身を乗り出し両手を振りあげ全身を揺さぶっての激しすぎる手拍子で他の客の注目を集めてたこと。とくに阿久悠&宇崎竜童作の「ムカシ」でその凄すぎ手拍子は最高潮になったが、あれは一体なんだったんだろ。大ファンとか追っかけとかってのはもちろんあるだろうが、そのノリの激しさにはどこか日本人離れしたものさえ感じた。都はるみは父親が韓国系の人だそうだが、ひょっとするとあのカップルもそちらに関わりのある人たちで、それで特別に彼女を応援してるというようなこともありうるかもしれない(勝手な想像にすぎないが)。
(上のアルバムのジャケ写が今回のコンサートツアーのポスター&チラシに使われていた)