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川中島異説 緑魔子/宇佐美定満

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12/16(日)『風林火山』最終回録画を見る。勘助は謙信(=政虎)に作戦を見破られた責任を感じ、川中島で進んで討ち死にするわけだが、この大河はここに一つあるツイストを持ち込んだ。謎めいた老婆おふく(緑魔子)が決戦前日勘助に朝霧が出ることを予言(というより予報か)し、勘助はその霧に乗じて敵を挟み撃ち(啄木鳥戦法)することを思いつき実行に移す。ところが狡賢いおふくは同じ霧の情報を上杉方にも密かに教えたため(双方から金子をせしめた)、挟み撃ち戦法が読まれた武田方は先手をとられて苦境に陥る(このときの上杉のゲリラ進軍が有名な鞭声粛々だ)。史上最大の合戦の帰趨が1人の名もない婆さんの気まぐれに左右されたという皮肉さがミソだ。謙信のこの〈見破り〉に関してよくいわれるのは、武田陣からあがる煮炊きの煙を見て察したというやつで、この大河でもそれは採用されてた。つまり霧と煙との併せ技で敵策を見抜いたというわけだが、ではかつての石坂浩二版謙信(『天と地と』)ではどうだったかといえば、残念ながら憶えていない。ただ柴田恭平謙信(『武田信玄』)の場合はよく憶えてる。たしか煙も霧も関係なく、謙信の「毘沙門様のお告げじゃ」の一言で作戦が決まるのだ。そこに「謙信の天才によって見破られた」という身も蓋もないナレーションが被さるが、とにかくこの柴田謙信はオカルト性が強く、川中島後には毘沙門天と二重人格になる場面まで描写されてた。今回のGacktも当初から「謙信の狂気を表現したい」といってて、実際その新境地がなかなか面白かったが、最後の最後は柴田謙信の狂気が上を行ってた、ということになるだろう。
 さてこのおふくを演じた緑魔子だが、随分久しぶりに見た──といっても、では昔どんなドラマで見たのかといえば、Wikiなどを見てもよく判らない。にもかかわらず強い印象があるのが妙だ。そもそもテレビより60年代の映画で活躍した人とのことで、そっちは遺憾ながらまるで知らない(『悪女』とかめちゃめちゃ見たいんだが)。ただ、判らないとはいいながら、子供の頃ある土俗的呪術的なテーマの単発ドラマでこの人を見た記憶が実は鮮烈にあるのだが、出演歴見てもそれらしい記録がないので、あれは何だったのかと不思議になる。いずれ調べたいところ。で、そこで共演してた(ような気がする)清水紘治と夫婦だとてっきり思ってたが、それは勘違いで旦那は石橋蓮司とのこと。

ところで勘助のカウンター・ライバルである上杉の軍師宇佐美定満(緒方拳)を巡っても一つツイストがある。諏訪の遺児寅王丸(柄本佑=柄本明の息子)による信玄暗殺の試みの背後にこの宇佐美がいたという設定だ。彼の巧妙な仕掛けによって武田の仲間であるはずの今川家の寿桂尼(藤村志保)が教唆するという複雑怪奇な話で、そこまでやるかなというにわかにはありえがたい説だが、こういう闇の謀略戦が面白くもあるわけで。この宇佐美はかつての『天と地と』では定行(宇野重吉)となっていたが、正しくはこちらの「定満」であるらしい。ただ伝説上は「定行」のほうが有名らしく、先日見た県立歴史博物館の合戦図などでもそちらになってた。