.

アン・ヨンハッ(安英学)

natsukikenji2008-02-18

東アジア杯北朝鮮代表に元アルビ新潟のMFアン・ヨンハッ(安英学)が入ってた。今夜の日本戦ではスタメン出場。テレビじゃアン・ヨンハと表記されてたが、正しくは「ッ」を入れるってのは有名な話。在日朝鮮人で、2004年まで新潟にいて鈴木慎吾(現大分)と並ぶ人気トップ選手だったが、05年向上を目指して自ら志願し名古屋に移籍、現在は韓国の某クラブに移ってる(それも望まれての志願だったらしい)。今でも新潟での人気は根強く、まだ実質レンタル中だぐらいに思ってるサポは多いんじゃないか。特徴はフィジカルの強さと果敢なプレー。
新潟といえばいうまでもなくかの拉致事件の舞台となった土地で、被害者家族も多く当然北朝鮮への反感はどこよりも強いにも拘らず、ヨンハッ(アンじゃなくこっちで呼ばれる)があれだけ人気があったのは他県人の目には奇異だったかもしれないが、そこが新潟のいいところ。そう、政治とスポーツは別なんだよ。……なんていえば理想論に聞こえそうだが、そういう複雑な立場ながらそんなこと顔色にも出さずひたすらストイックに精進するヨンハッには誰もが感心してたというのがほんとのところだろう。
アルビのとき初めて北朝鮮代表に招集されて、今回の重慶ではすっかり定着して中心選手という感じだが、この日本戦では何といってもFWチョン・テセ(鄭大世川崎フロンターレ)の影に隠れざるをえない。しっかしこのテセの破壊力は何なの? 1人でこんなに打開できる危険なFWって日本にゃいないだろ。高原ぐらいか、ひょっとしたらそれ以上じゃないか。いや、結果的に打開できないにしても、何で日本選手は少なくともそれにチャレンジしようとしないんだよ。
解説陣はみんないつも「誰か仕掛けろ」とあんなに口酸っぱくしていってるし、何より岡ちゃん自身スパサカでの金田のインタビューに答えて、「ドリブル突破とか全然やっていいんだ、とにかく点さえ獲れりゃ」といってるのに、肝心の選手たちはいつまで経ってもご丁寧なパス回しばっか、挙句に奪われてカウンター食らったり、それが怖くてミドルフカしたり。ミドル打つたびに実況は「積極的」とかいうけど、毎度宇宙開発じゃ逆に相手の思う壺でしょ、今日も四回ぐらい打って一度も枠にすら行ってなかったけどさ。どうせ無理なミドルに賭けるぐらいなら、もっとドリブル仕掛けてもっと前から打ちゃいいじゃんか、近けりゃそれだけ入る率高まるに決まってんだから。「ミドルが足りない」とか形だけいってどうすんだよ、足りなくて困るのはそんなんじゃなくて「ゴール」だけでしょ。誰か1人がとにかく早く前まで無理してでも運べば、仮にそこで盗られたとしても、後ろでパスカットされるよりは遥かにましでしょうに。
どうも日本の(とくに代表の)サッカーって、あれじゃないかな、06W杯仏大会でのアルゼンチンがセルビア戦だかでやった超華麗なパス回しゴールに幻惑されて(数々のスーパーゴール抑えてあれが人気1位になってたが)、パスサッカー至上主義の落とし穴にはまってるんじゃないか。それがまた「個人技はなくてもチーム力で」なんていう、お国柄にかこつけたお題目に合致してるかのように見えるものだからなおさら。W杯惨敗直後に俊輔が放心顔で二度も同じこと呟いてた「形はできてる。あとは決めるだけなんだけど…」って台詞がその落とし穴落ちを象徴してるような気がする。逆でしょ! ほんとは形なんかどうでもよくて、というより要らないかむしろ邪魔なだけで、とにかく決めりゃいいだけのことじゃないんかい? そういう原点がないよな、システムだの何だのしちめんどくさいこというほうが通だみたいな風潮ばっかで。何だかみんな「パス回し」という盆栽か箱庭いじくってるだけみたいに見えるのがいかにも日本人ぽいよな、そんなのにどれだけ精通したって「ゴール」という雄大大自然には触れられないってのにさ。
それでいてJの各クラブに帰ると、どこも判で捺したみたいにブラジル人FWの個人技と打開力に頼りきってるんだから奇妙だよな。だからいつまで経っても日本人得点王が出ない、というより育たない。その現状がまた代表に即反映して、当然のごとく「決定力不足」という悪循環。珍しく個人突破力ありそうだった大黒は欧州で飼い殺し。そんな台所事情じゃ北朝鮮とも引き分けるでしょ。というよりそれさえラッキーだってぐらいで。
ただまあいえることは、今季Jはチョン・テセの凄さ見せつけられるにつけ、川崎が相当な破壊力であるのはたしかだってこと。得点王ジュニーニョ残留、おまけにJ2得点王フッキまで復帰して、挙句にテセが今日のゴールで自信倍加したら、一体どれだけ凄いことになる? 昨季新潟より一個上なだけの5位ってのが信じられないくらいだ。