.

我孫子武丸、菊地秀行

警視庁特捜班ドットジェイピー 探偵になるための893の方法 2 (ヤングガンガンコミックス) 妖獣都市 黒天使―闇ガードシリーズ (トクマ・ノベルズ) 魔界都市ブルース 妖婚宮 (ノン・ノベル 849 魔界都市ブルース) 退魔針 紅虫魔殺行―超伝奇小説 (ノン・ノベル 842)
贈っていただいた本シリーズその3。


我孫子武丸『警視庁特捜班ドットジェイピー』(光文社)。カバー絵だけパッと見ると(喜国雅彦画)この作家原作のコミックかという感じだが、これは小説。といってもこの作者のこと、真面目なはずがない──といいきっては失礼かも、比較的(?)真面目な作品もあるので。だがとにかくこの小説に関する限りは目一杯のおふざけノリだ。警視庁が広報活動の一環として戦隊物ブームにあやかり編成したのが特捜班ドットジェイピー。命名は勿論〈.jp〉に因んでだが実はとくに意味はなく単にカッコいいからだって。メンバーはアイドル風美少女やミスコン美女やジャニ系イケメン等美形揃いでCDデビューも目論むが、それぞれの天然キャラが災いして墓穴堀りまくりで大事件に発展し…というこの著者お得意のスラップスティック。とはいえおふざけ好きでいながら万事にシビアな本格ミステリ作家はただ無闇に笑いをとろうとするわけじゃなく、ストーリー運びのハズし方・ズラし方に常に独特の辛味を効かせてて、実はそれこそが面白がりどころ──なんじゃないかな?と思う。
『探偵になるための893の方法vol.2』(我孫子武丸原作/坂本あきら画・ヤングガンガンコミックス)。こっちこそは本物のコミックで、以前紹介した1作目に次ぐシリーズ物。探偵志望の主人公が雇われた事務所はとんでもない●●●で…というこちらも当然ながら相変わらずのギャグ仕込みだが、承前のストーカー事件とメインの自縛霊事件ともにこの作者らしい冷たい皮肉味が効いてる。


菊地秀行。『妖獣都市──黒天使』(TOKUMA NOVELS)は相当久しぶりになるらしい〈闇ガード〉シリーズ新作。この作者の〈学園物〉にしてヒロインが〈女子高生〉というだけでヤバさが匂うが、期待通りにヤバい。いや勿論それをこそ楽しめばいいわけだが。〈妖獣〉の妖(怪)しさも期待していいですよ。
魔界都市ブルース──妖婚宮』(祥伝社ノン・ノベル)はいわずと知れた〈マン・サーチャー〉シリーズ。今回は東北を統べる闇の一族の抗争に〈妖婚〉が絡む。東北伝奇への味付けがキモ。これまた相当ヤバいよ。小畑健の装画挿絵がカッコいい。
退魔針──紅虫魔殺行』(同ノン・ノベル)は伝奇コミック『退魔針』シリーズ(菊地秀行原作/斉藤岬画・幻冬舎)からのスピンオフ小説とのことだが未読。これもどうやらかなりの…


本格ミステリvs伝奇怪奇という接点の乏しそうな2人の作家我孫子武丸菊地秀行にはしかしギャグ好きという共通点があって(ちょい無理やりかな)、実際読んでて文体のリズムみたいなものがどことなく似てる?!ように思えることがあるが、その一方で大きく違うのは何といっても後者は〈エロ〉が強烈だってところ。でも実はほんとはそこにも共通するものがあるんじゃないかと思ってる、つまり後者のエロは即物的だが前者には隠された淫靡さがある、とか。いやこれは決して無理やりじゃなくて、我孫子武丸の小説は昔から内実的にエロいという気がしてた。これはたしか。