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『黒部の太陽』


1968年公開後1度もソフト化されたことのない伝説の映画『黒部の太陽』。Wikiに「40〜50代は学校で見た人多し」とあるとおり、中学生のとき全校生徒が体育館に集まってこの映画を見た(見せられた)。非常に強烈な〈何か〉を子供心にも残す作だったのは確かだが、最も印象にあるのはトンネル内出水事故シーンの凄さと新国劇の大御所辰巳柳太郎の存在感で、主演の石原裕次郎三船敏郎はなんだか一歩退いて敢えて脇に回ってるような感じがあった。今にして思うと、2人は企画から完成まで相当苦労したらしいから、自分たちが目立つことより「映画そのものを主役にしなきゃ」みたいな必死さの現われでそうなったのかもしれない。見終えたあと教室で数学の先公(既に故人)がいったことが妙に記憶に残ってる。「最後に黒部の太陽がほんとに出るのかと思ったら出なかったな。あれはきっと──」でもその先公がいったことをここでの答えにしても仕方ないから明かさずにおく。あの太陽とは何だったのか? 疑問のままでいい気がする。


3/21(土)フジ50年記念SP『黒部の太陽・前編』を見た。虚心にいって、『白い巨塔』を創ったCXドラマの底力を見た──脚本大森寿美男(『風林火山』)演出河毛俊作(『沙粧妙子』『ギフト』)ともに『巨塔』スタッフというわけじゃないにもかかわらずだ。香取慎吾は鬼気迫る熱演で新境地拓いた。小林薫は眼鏡顔で敢えてオーラを消しリアリティに徹してるのが面白い。前半見ただけでいってしまうが、このドラマの成功はとにかく〈普通に創ってる〉ことの勝利だ。映画だろうがドラマだろうが変に狙って創っても、その〈狙う〉こと自体がテーマなら別だが、そうでないかぎり失敗するのが常だ。骨太なんていうクサい言葉を使いたくはないが、これだけの分厚くて重い世界を〈お茶の間〉に届くように創るにはこうするしかないという見本のようなドラマだ。3/22(日)後編予定。
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2008/08-258.html
http://wwwz.fujitv.co.jp/kurobe/index.html

↑本当の〈主人公〉であるトンネル。実物じゃなく日活撮影所に作ったセットとのこと。だが出水シーンは真に迫る迫力だった。