『ジャンピング・ジェニイ』アントニイ・バークリー
アントニイ・バークリー『ジャンピング・ジェニイ』(創元推理文庫・10/20発売)を訳者の狩野一郎さんよりいただきました。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488123062

【屋上の絞首台に吊された藁製の縛り首の女(ジャンピング・ジェニイ)──小説家ストラットン主催の〈殺人者と犠牲者〉パーティの悪趣味な余興だ。ロジャー・シェリンガムは、有名な殺人者に仮装した招待客のなかの嫌われもの、主催者の義妹イーナに注目する。そして宴が終わる頃、絞首台には人形の代わりに、本物の死体が吊されていた。探偵小説黄金期の雄・バークリーが才を遺憾なく発揮した出色の傑作!】(=カバー裏の紹介文)
2002年本格ミステリ・ベスト10海外部門で見事1位となった世界探偵小説全集31『ジャンピング・ジェニイ』(国書刊行会)の待望の文庫化。世界探偵小説全集のバークリーといえば95年『このミス』5位でその後もさらに評価高まる一方の『第二の銃声』(西崎憲訳)もあり、また創元推理文庫でのバークリーといえば本格ミステリ史屈指の古典『毒入りチョコレート事件』(高橋泰邦訳)をはじめ別名フランシス・アイルズ名義の傑作群なども出ており、双方とも非常に相性がよい感じなので、こうして好相性同士の間での文庫化が成ったのは作家バークリーにとっても大変よかったのではなかろうか。また解説は国書版の若島正から川出正樹にバトンタッチされたが、「犯罪実話」という視点からある意味マニア向きに書かれた若島版に対し川出版は軽妙なタッチでお初の読者も興味を掻き立てられるように書かれ(それでいてマニア方面への配慮もちゃんとあり)、その意味で文庫版としてはより相応しくなっているといえる。川出氏は【『ジャンピング・ジェニイ』をオススメするのは、ロジャー・シェリンガムという特異な"名"探偵に初めて触れる作品として、本書が最上の一書だからです】と書いているが、まさにそうだろう。『毒入り…』でも『第二…』でもロジャー・シェリンガムは〈出演〉シーンが小説の特殊な構成上限られざるをえなかったのが、この作品では出ずっぱり──即ち唯一の視点人物──になってるので、その"名"推理ぶりをこれでもかとばかりにたっぷり堪能できる(勿論ラストでは飛び切りの驚きも)。大体バークリーの本格ミステリは自身〈黄金期〉のそれでありながら痛烈な〈黄金期批判〉でもあるようなので、シェリンガムの名(迷?)探偵ぶりがまさにその点を象徴する要素だとすれば、本書は『毒入り』『第二』の先行2大問題作に勝るとも劣らない異色傑作といえるだろう。 狩野さんありがとうございました!
(なお『毒入り』も今月新版で再刊されるとのこと)
