『レクイエム』 / 『フラクション』
色々あってちょっと今更感な時期になってしまったが…ここ→http://d.hatena.ne.jp/natsukikenji/20091104 で採りあげた千澤のり子&二階堂黎人『レクイエム 私立探偵・桐山真紀子』読了。予想どおり読み応えあった! ──というのはとにかく幼い子供が多数無残な死に方をする幼稚園バス爆破事件というのを扱っているので(勿論架空の事件ではあるが)少なくとも軽いタッチの書き方はされていないだろうなとだけは想像されたから。容疑者が裁判で急転犯行を否認、警察捜査に疑いを抱いた探偵真紀子が独自調査に乗り出す。あまりにも凄惨な事件ゆえの迷走の末についに明かされる真相…これには結構やられた。随所に挿まれるある意味ありげなメール文が「絶対何かあるぞ」と期待を煽り、それを裏切らないラストの異様な驚きの感触がよかった。あとこれは個人的には結構弱いんだが…事件現場のむごたらしさの描写がなかなか凄い。「喪失の哀しみ」というテーマのためには不可欠な要素だったと思うが、それなりの覚悟が要っただろうと思いやられる。実は自分も嘗て子供が大勢殺される描写をやったことがあるが(サイモン・クラーク『地獄の世紀』)、所詮は他人が考えたことだという逃げがどこかにあった。訳者なんてそんなものだが、でも小説家はそうはいってられないから強い意志力が要るだろう。共作とは感じさせないまとまり感にも感心。力作。
ついでながら(一応ミステリー繋がり&凄惨な事件繋がりということで?)噂の駕籠真太郎『フラクション』読んだので挙げとく。漫画は近頃めったに読まないんだが、これは珍しく食指の疼きに抗しきれなかったので。
で肝心の感想はというと──
きゃはははははははははははっ!!
ということでいいだろうか? 1つだけヒントいってしまえば──
ミステリーやトリックというより何となくクライヴ・パーカー『血の本』思わせるシュールホラーっぽいとでもいえばいいでしょうか(昔矢野浩三郎がバーカーはホラーというよりシュルレアリスムだといってた)。作者と霞流一氏の対談収録。