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田中泯

3/14(日)『龍馬伝』11回「土佐沸騰」。http://www9.nhk.or.jp/ryomaden/story/index.html#11
最初プログレカメラが気になって、というかそういうものをカッコつけて使ってしまうような制作サイドの姿勢が気になってどうも乗りにくかったが、このところ自分の中で尻上がりに好感度増してきてる。それは結局脚本てことになるのかもしれないが、要するにとかくしちめんどくさくなりがちな幕末物を結構判りやすく入り込みやすくやってきてるなってところに収斂する。言い方換えると、幕末物ってとかく「日本をよくするために立ち上がった讃えられるべき英雄群像」的な感じがあって、薩長に煮え湯呑まされた側からすると白々しい良い子ぶりに映りがちなんだが、それがこの『龍馬伝』では「倒幕とかいったって所詮権力闘争さ」みたいな面をより強く出してきてるのが──つまりは結局のところ戦国物と同じ人間の欲と意地のドラマにすぎないんだぜ的な部分を打ち出してきてるのが「へえちょっとはやるじゃないか?」と思わせ始めたってことだ。龍馬の人物像にしてもこれまでだと「1人だけ最初から世界の本質を見抜いてた無二の傑物」ふうに描かれがちだったのが、今度のでは何故にそんなふうに変貌を遂げていったのかという経緯(そういうのをtransitionていうのかな)まで頷けるように描いてきてるってことだ。で「欲と意地のドラマとしての幕末」って面でいうと、それを象徴してるのが今巷で話題沸騰?の破天荒な狂言廻し岩崎弥太郎(=香川照之)だ。名脇役といわれる香川だがその反面これまでは脇に徹しすぎてたのが、今度ばかりは主役を食う存在感ありすぎっぷり。最近急激に弥太郎物書籍の新刊復刊が目白押しだが、南條範夫『暁の群像』復刊(http://d.hatena.ne.jp/natsukikenji/20090725)で先鞭つけた末國善己氏はさぞ鼻が高いだろう。ところでもう1人現在の序盤で矢鱈目立つのが吉田東洋役の田中泯だ。

俳優としての出世作らしい『たそがれ清兵衛』は見てないが(山田洋次の映画はどうも見る気起きん)、あの眼光と迫力はたしかに香川照之が「妖怪」と呼ぶのも頷ける。桜田門外の変はあっさり済ませちまった今度の大河だが、近々やるはずの東洋暗殺劇に関するかぎりはかなり期待できるんじゃないか。余談だか東洋の件に集約される当時の土佐の混乱ぶりを現在の高知県民が固唾を呑んで見守ってるんだろうなと思うと、『天地人』の頃御館(おたて)の乱なんかに一喜一憂してた新潟県民の姿が偲ばれて(そういうのを目の当たりにしてるので)何だか可笑しい。