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『日本の自画像 ──写真が描く戦後』

『日本の自画像 ──写真が描く戦後』(於・県立近代美術館)を覗く。http://www.lalanet.gr.jp/kinbi/exhibition/2010/jigazo.html

いつもの企画展のほうの展示場でやってるものとばかり思ってたらそっちは扉が閉まってて、この写真展はいつになく常設展のほうを占拠して開催されてた。一瞬「?」と思ったがすぐ察しがついた。企画展では4/24から問題の『平安遷都1300年記念──奈良の古寺と仏像』をやらなきゃならないのでその準備で大わらわなんだろう。普通ならそんなことにはならなくてちゃんと各企画展の間に猶予期間を置いてゆっくり準備するんだろうが、件のすったもんだの挙句急遽決まったものだからそんなことはいってられないって事情なんだなきっと。まあそれはいいとして…
この写真展はフランス人の若手研究家が企画して全国回ってるものらしいが、とにかく土門拳木村伊兵衛奈良原一高etcといった大家の作品が多数入ってる上に総数もかなりのもので、甘く見てたら全部見て回るのに結構時間かかった。終戦直後の写真では進駐軍闇市や復員兵といった被写体が当然のごとく目立つが、そういう都会というか東京方面の風景だけじゃなく地方や農村の状況を捉えた写真もかなりあったのは好感持った。ただ広島の原爆禍の跡を写したものは申し訳程度にしかない感を否めななかった──とはいえそのテーマはあまりに特別すぎるので掘り下げようとすると膨大な量になったり客の目がそこだけに集中したりってことになりそうだから仕方ないのかも。↑上の写真は大御所土門拳の「しんこ細工 浅草雷門、東京」(1954・昭29)という有名らしい作品で今回のポスターのメインになってる。中央の男の子の表情が素晴らしいが、よく見ると視線が女性の手先には向かってないような気もする。土門の写真は概して判り易く且つ迫力があるものの、どうも構図が整いすぎてる嫌いがあるのもたしかだ。あと外人の研究家らしく芸術写真にも食指のばしていて、細江英公の高名な「薔薇刑」シリーズのも幾つかあった。