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尾崎紀世彦

尾崎紀世彦また逢う日まで」、元はズー・ニー・ヴーが唄ってた曲だったというのだけはどこかで目にした憶えがあったが、大ヒットにいたるまでにこれほど↓の紆余曲折があったというのは迂闊にも今まで知らなかった。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2012/06/01/kiji/K20120601003372930.html
また逢う日まで」というと、大晦日の紅白前のレコード大賞受賞をブラウン管に目を釘付けにして見たのち、年が明けて最初の数学の時間(中学のときだ)、一風変わった人だった数学の先生が授業の枕でいきなりその話題をひとくさりしたのをよく憶えてる。「あれは森進一の悔しさがほんとによく出てたな」と。そう、「また逢う…」は森の「おふくろさん」と熾烈な大賞争いを演じて勝ち、尾崎のあの両手のVサインにいたったのだ。「おふくろさん」は最優秀歌唱賞に終わり、司会陣に受賞を祝福された森は涙を滲ませ、それが恰も嬉し涙であるかのように演出されたが、実は悔し涙に違いないことは誰の目にも明らかだった。しかも尾崎はすでに歌謡大賞まで勝ちとっていたから、毎年なかなか大賞をとれずに「今年こそは」と「おふくろさん」に賭けていた森の悔しさはひとしおだったろう。そもそも曲調からして「また逢う…」とは陰と陽の違いがあり、両者の明暗を一層際立たせた。しかし皮肉なことに歌詞の内容は「別れの悲歌」対「母親への讃歌」と、陰と陽が実は逆だったのだが… 因みに森は後年「襟裳岬」でレコ大を初受賞したときさほど感激した様子もなく妙に淡々としていたが、あれはきっと嘗ての絶大な悔しさでレコ大を巡る感情のエネルギーを使い果たしたからじゃないかと勝手に思ってる。
ところで尾崎紀世彦といえばずっと前にここhttp://d.hatena.ne.jp/natsukikenji/20081225でちょっとだけ触れたが、とにかく自曲を勝手なフェイクで唄ってしまうことにどうしても馴染めず、懐メロ番組で尾崎が出るとチャンネル変えたくなるほどだったが、それは「また逢う…」に限ったことじゃないらしいというのがYoutube検索してみて判った。
ということで、個人的にそちらより好きだった「愛する人はひとり」を↓。ライブ映像のもUPされてるのだが例によって後年のフェイク・バージョンなので、当初のレコード音源とおぼしいこちらのほうが断然いい、単に声が若くて張りがあるからというだけじゃなくて。


ご冥福を祈ります。
ザ・プレミアムベスト 尾崎紀世彦