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森瀬繚監修『萌え萌えナチス読本』

森瀬繚さんより監修書『萌え萌えナチス読本』(ナチス読本制作委員会編・イーグルパブリシング・4月刊)をいただきました。
http://www.tp-ep.co.jp/ep-hp/top.html

ここ→http://d.hatena.ne.jp/natsukikenji/20091022で紹介した『萌え萌えクトゥルー神話事典』に続く〈萌え萌え〉シリーズの新刊。…ってことだが、クトゥルー神話でさえあっけにとられたのに今度はナチスで萌え萌えって…もうおらのような田舎のジジイにはついていけない世界かも…と思って中を覗いてみたら、これが意外や意外の内容だった。つまり項目ごとに挿まれているイラストこそまさに「萌え」の王道と思われる(と知らぬながらも想像する)絵がこれでもかとばかりに続くのだが(美少女漫画界の精鋭33作家が総カラーで競演! 『ケイオスシーカー』の御大・矢野健太郎画伯も!)、それに伴う解説記事のほうはなんとガチガチの硬派で、決して「萌え」の観点からナチスの様相を必要以上に賛美したりだとか、暗黒の現代史を変に面白可笑しくアレンジしたりなどというようなことは全くなくて(実のところ題材が題材だけに事前にはそんな不安がちょっとは頭を掠めないでもなかった、何しろ扱い方によっては雑誌が1つ廃刊に追い込まれたりなんてことさえ現実にあった分野だから)、豈図らんや記事だけ読めば当方のような無知な輩には純粋にとても勉強になる詳細極まる参考書になっていて、「萌え」とかの要素抜きでも充分以上に売り物になるだろうと思えるものだった──がしかし、それは素人考えの浅はかさ、この本のこの本たるところはやはり「萌え」抜きでは、つまりその部分を受け持つ膨大なイラスト群抜きでは成立しえないんだろうな。「価値観の多様化が進む今日物語の敵役として絶対悪を設定することは難しい」「故にこそわかりやすい悪のモチーフとしてナチスが用いられてきた」と序文でいっているように、価値の多様化の究極である「萌え」の分野でも「悪」が必要とされている以上、最早ナチスといえどもこういう形で採りあげることを避けて通れなくなったってことだ。その意味でこれは同じ森瀬氏による『図解第三帝国』(http://d.hatena.ne.jp/natsukikenji/20080724)の進化型といえるのかも。いやほんと、この本の記事と挿画とを併せて読み進んでいくと、ナチスの「悪の美」とでもいうべきものが徐々に実感できてくるような気がする。一見ギャップのありそうな活字と絵が脳内でブレンドされ、イケないクスリのように意識に沁み込んでくるからかもしれない… 因みにあとがきで森瀬氏は小学校の頃『わが闘争』を貪り読んでナチスに激しく興味を持ったことを告白しているが、そんなとんでもない早熟児だった人を監修者に迎えられたこの本はまさに幸福というほかないだろう。
ところで上↑に書影を2つ掲げたのは、広江礼威氏によるカバー絵が素晴らしいので帯を外した全図をちょっと載せておきたかったのと、その一方で帯もこれまた「第三帝国を萌やし尽くせ!」とか「ドイツは萌えているか!?」など結構好きなので、両方見れるようにしてみたという次第。それから下↓に貼ったのはイラストの代表例として項目「大日本帝国」と「突撃隊SA」の絵を。其々カナミユキ葵カナン画。

こうして見ると日本軍のコスも結構イケるかも。この際いっそ「萌え萌え二・二六事件」か「萌え萌え関東軍」なんかどうだろうか、個人的に好みっぽいんだが。両者とも萌えキャラ?には事欠かないテーマだし、北一輝とか石原莞爾とか甘粕正彦とか川島芳子とか。
いやほんとならマイケル・スレイドの続巻に"SWASTIKA"と"KAMIKAZE"というのがあって其々モロそっちテーマなんで、『萌えナチ』とか『萌え日本軍』なんてのを参考文献にできたらさぞ楽しく仕事できるだろうななんてちらと夢想したりもしたんだけど… 残念ながら現実にはスレイドはもう出せる見込みがないので夢想は夢想で終わらざるをえないというお粗末。


あと実はこの本と一緒に森瀬さんがクトゥルー記事を書いた雑誌ってことで『月刊メガストア』5月号と『ゲームラボ』4月号も併せて送ってくださったのだが、一部ここでの紹介を憚られるようなモノを含む雑誌なので(=前者)、Amazonの書影のみ貼らせていただくこととします↓。というわけで、どうもありがとうございました!
ゲームラボ 2010年 04月号 [雑誌] MEGA STORE (メガストア) 2010年 05月号 [雑誌] 萌え萌えナチス読本