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『学校の怪談』3種

学校の怪談f [VHS] 学校の怪談 物の怪スペシャル [DVD] 学校の怪談 たたりスペシャル [DVD]

相澤仁美の『トイレの花子さん』を見てふと思い立ち、手持ちの学園ホラー物の映像ソフトの1部を挙げてみる。残念ながら花子さんシリーズのは1つも持ってないので、代わりに〈学校の怪談〉物を3つ。『学校の怪談f』『学校の怪談・物の怪スペシャル』『学校の怪談・たたりスペシャル』。どれもDVDじゃなく中古VHSを安く買い漁ったものだ。〈学校の怪談Wikiによればいずれも関西テレビで94年に3ヶ月だけ放映されたドラマ『学校の怪談』からその後派生したスペシャル物のソフト化とのことで、残念ながらそのオリジナル・シリーズは全く見ていないが、これらのスペシャル物の質に関するかぎりは驚くばかりに高度だ。それもそのはず脚本監督陣が異常に豪華で(黒沢清・鶴田法男・小中千昭高橋洋中田秀夫矢口史靖etc…)、しかも『たたりSP』『物の怪SP』ではキャストも豪華極まる(竹中直人・坂井真紀・岡本綾市川染五郎柴崎コウ深津絵里池脇千鶴京野ことみ…+無名時代の妻夫木聡伊藤淳史)。
さてまず『学校の怪談f』(3話収録)はキャストに関するかぎり子役が多いこともあり比較的地味だが、とにかく中心となるエピソード「霊ビデオ」が凄い。脚本小中監督中田という強力さの上に、主演の1人馬渕英里何の熱演が素晴らしい。ダブル主演の増田裕子とのある心霊映像を巡る親友同士の女子高生の心理テーマなのだが、小中節が炸裂していて快哉を叫ぶ傑作だ。因みにこの増田裕子という子は息を呑むほど美形なんだが、奇妙なことに検索してもよく判らない。わずかにドラマ『名探偵保健室のオバさん』に出演してるという記録が残ってる程度で、ひょっとすると何らかの理由で芸能活動が極めて短かく終わったのかもしれない。また「廃校綺談」は黒沢作演出で、無名の子役中心ながら叙述トリック(?)を交えたりした佳品。
『たたりSP』(4話)では高橋脚本鶴田演出の「たたり」がとにかく凄絶で、個人的には大袈裟でなくあらゆるホラー映像の中でも最恐といってもいいほどの大傑作。女子高生が謎めいた男の自殺を目撃したあと霊に悩まされる話なのだが、その映像とラストの怖さたるやつい本物の〈何か〉の介在を感じてしまうほどだ。因みに主演の岡本綾はこのあと私生活でのスキャンダルが持ち上がったりして程なく引退している。またこの『たたりSP』と上の『f』はオリジナル・シリーズからの流れで池乃めだかが案内人を務めている。
3つ目の『物の怪SP』(4話)ではその池乃が外れ、代わりに竹中柴崎コンビが「魔界学園」なるオープニング・コントを務めている(ごく短いものとはいえ矢口作演出で、一応ゾンビ物なのだが面白いことに舞台がミスカトニック高校となってる!)。収録作の中で好きなのは鶴田演出池脇主演の「何かが憑いている」と黒沢演出京野主演の「花子さん」。「何かが」は女子高生が憑霊された友人(奈良沙緒理)を救おうとする話だが、上記の「たたり」と並びここでも鶴田演出は冴えまくってる。因みに随分と可哀想な役回りだった奈良はこのあと間もなく芸能界から身を退いている。「花子さん」は自殺した女の子の霊が卒業後に集まった友人たちに祟る話で、筋立てはよくあるものながら演出の随所に黒沢節が覗いてニヤリとさせる。
上記3作の他に同シリーズでは『学校の怪談・呪いスペシャル』と『学校の怪談G』があってやはりソフト化されてるが、前者は内山理名出演作なので持ってる(ただしこれもVHS)ものの後者は未見。その『G』というのはなんと清水崇演出で、しかもあの『呪怨』関連エピソードが含まれていて同映画のDVDに再録されてるとのことだが、現段階では遺憾ながら未確認。

ところでもう明らかなとおり、上に紹介した3つのビデオに出ている3人の若手女優(増田裕子・岡本綾奈良沙緒理)がその後時を経ず打ち揃ったように表舞台から姿を消しているわけだが、個人的には何やら偶然のことのように思えず……